勿嘗糟粕

上の写真の書
勿嘗糟粕  甲戌夏日  楽水

は理学部図書閲覧室に掲げられている額です。楽水とは、有名な物理学者で、 第1回文化勲章を受賞された本学初代総長長岡半太郎先生の雅号です。甲戌は 昭和9年に当たり、この年の4月に大阪市内の中之島に理学部の旧建物が竣工 しています。「勿嘗糟粕」は糟粕をなめるなかれと読みます。 辞書によると、 糟粕とは酒のしぼりかすで、転じて、滋味をとりさった不用物、精神のない遺 物とあり、また、糟粕をなめるとは、作った人の精神を汲みとらず、形だけま ねること、と解説しています。従って、この書は科学を志す者にとって貴重な 教訓といえましょう。


天地有..

上の写真の書
天地有大美而不言  四時有明法而不議
萬物有成理而不説  聖人者原天地之美
而達萬物之理

は理学部会議室に掲げられている額で、湯川秀樹先生の筆になるものです。 この句の出典は「荘子」で、その最終編第4 節の冒頭に出ているもので、 「天地は大美有れども、而も言わず。 四時は明法有れども、而も議せず。 萬 物は成理有れども、而も説かず。 聖人は天地の美を原(たづ)ねて萬物の理に 達す」と読みます。 本学名誉教授森三樹三郎先生は次のように訳されました。 「天地は萬物を生育するという、すぐれた働きをもちながらも、それを口に出 して語ることがない。 春夏秋冬の四時は、明らかな法則をそなえながらも、 みずからこれを論じたてることがない。 萬物はそれぞれに完成した理をそな えながらも、みずからこれを説くことはない。 聖人とは、この天地のすぐれ た働きのありかたをたずね、萬物の理に達した人間のことをいうのである」。

 また、James Legge 氏により次のように英訳されています。
(The operations of )Heaven and Earth proceed in the most admirable way,but they say nothing about them; the four seasons observe the clearest laws, but they do not discuss them; all things have their complete and distinctive constitutions, but they say nothing about them. The sages trace out the admirable operations of Heaven and Earth. and reach to and understand the distinctive constitutions of all things ‥.
(F. M. Muller; The Sacred Books of the East, vol. 40, 1891 より)