平成8年4月1日に実施の大学院重点化による組織改革の内容とその意義は、次のように要約できる。
1)高分子学科の教官組織を大学院に移し、大学院の教育・研究を充実させる。
2)従来の小講座制を廃止し、複数の研究室から成る3大講座を基幹講座とすることにより研究・教育の効率を高める。なお、蛋白質研究所の2グループの組織も協力講座として1大講座に再編した。平成12年度における高分子科学専攻の組織を表1.2に示す。
3)従来の5研究室を7研究室に拡げることにより、多様な分野に広がりつつある高分子科学の進歩に対応する。
4)高分子学科と化学科の統合により、広い視野の基礎教育を実行する。従来から両学科は同一のカリキュラムで学部教育を行ってきたが、この統合は、学生が低学年から専門分野に閉じこもることを軽減する。
当専攻は、我が国において唯一理学研究科に所属する高分子学の専攻である。他大学には見られないこの特徴を生かすことが当専攻の使命と言える。すなわち、それは、高分子を基礎科学の分野と捉え、先端技術の基盤である高分子の基礎研究を世界のトップレベルで行うと同時に、国際感覚と基礎研究の能力を身に付けた学生を社会に輩出することである。表1.3に示すように、重点化により大学院博士前期及び後期課程の学生定員が大幅に増加した。その結果、他大学、他専攻から多様な学生を受け入れ、社会のニーズに応える責任が増大した。専攻の組織替えのみならず、大学院入学試験科目と配点の再検討やカリキュラムの再編成を直ちに実行し、研究・教育の充実を図った。
一方で、学生数の増加は深刻な建物面積の不足をもたらした。平成12年8月に化学・高分子科学棟が新築されたが、この問題は依然として残されている。また、専攻の各研究室が新棟と理学部本館(旧棟)に分かれているのは、研究能率のかなりの低下をもたらしている。施設面での改善が必要である。