誘電緩和法では、図1に示すように、電場印加後の双極子の配向を時間の関数として観察します。配向の速度は、双極子を持つ分子の平衡状態における熱運動の速さに相当します。従って分子運動のタイムスケールを調べることができます。 誘電緩和法を高分子物質に対して適用することで、高分子の持つ多様な分子運動を捉えることができます。そこで重要な因子となるのは、高分子骨格への双極子の配列の仕方です。一般に高分子の双極子は図2に示すように3種類(A,B,C) に分類されています。 A型双極子では、各モノマー単位の双極子ベクトルの和は結合ベクトルの和に比例するため、 高分子全体の双極子能率は末端間距離に比例します。したがって、誘電測定により末端間距離の変動を観測できます。B型双極子は数個の主鎖原子の協同的回転によるセグメント運動、C型双極子は側鎖の回転を反映します。