高分子鎖の分子運動
高分子はモノマーが多数つながってできた鎖状の巨大分子です。高分子鎖は溶融状態や溶液状態で糸まりのような形(ランダムコイル)をとり、局所的にみるときわめて激しく運動していますが、分子全体では、非常にゆっくりと動いています。つまり速いものから遅いものまで、多くの運動モードが高分子鎖の熱運動には存在します。さらに、高分子鎖は互いにからみ合っているので、複雑な分子間相互作用の影響をうけます。また低温では、運動は非常に遅くなり、ガラス転移温度以下では大規模な運動は止まってしまうといった現象が起こります。このように、高分子は運動の自由度が高く、測定のタイムスケールや温度によってさまざまな分子運動が観測されます。当研究室では、広い時間スケールにわたる高分子の分子運動を誘電緩和法を中心に、拡散、レオロジー法、超音波吸収法などによって研究しています。
また動的な性質と静的な性質(熱力学的性質)の関連を捉えるために、熱容量測定も行っています。
主鎖に平行な双極子能率を持つ高分子では、高分子鎖の末端間ベクトルのゆらぎが誘電緩和として観測され(これはノーマルモード緩和と呼ばれています)、その双極子能率の大きさを評価することで、高分子鎖の末端間距離を決定する事が可能となります。この手法により、高分子鎖の形態とダイナミックスを同時に調べることができます。当研究室では、ブロック共重合体や高分子ブレンドなどの相転移とノーマルモード緩和の関係を調べています。