研究内容

私たちは、分子構造から集合構造までを階層的に制御することで、新たな特性や機能を発現する高分子材料の創製を目指しています。
その実現に向けて、両親媒性/機能性高分子の精密合成法の開発と、 自己組織化を高度に制御するシステムの構築に取り組んでいます。
   

1. 水中制御自己組織化によるポリマーミセルの精密構築

親水性ポリエチレングリコール(PEG)鎖とドデシル基などの疎水性アルキル基を有する両親媒性ランダム共重合体は、水中で疎水性側鎖が会合することで、主鎖がコンパクトに折り畳まれたユニマーミセル(1本のポリマー鎖からなるミセル)や、複数のポリマー鎖集合した多分子会合ミセルを形成します。これらのミセルは、いずれも10 nm程度と小さく、タンパク質に類似したサイズをもちます。

本系では、リビングラジカル重合を用いて共重合体の組成(親水性/疎水性バランス)および鎖長(重合度:DP)を設計することで、ミセルのサイズ(分子量 Mw,H2O)と会合数(Nagg)を独立して制御できます。具体的には、ミセルサイズ(分子量 Mw,H2O)は組成および側鎖構造によって、会合数(Nagg)は重合度(DP)によって制御可能です。さらに、このミセルは水中で温度応答性を示し、その曇点も分子設計により調節できます。

このように、分子構造を精密に設計することで、三次元会合体の構造を自在に制御できる手法を確立し、両親媒性ランダム共重合体を基盤とした制御自己組織化システムの開発に成功しました。
1. 水中制御自己組織化によるポリマーミセルの精密構築

<関連論文>
  • 両親媒性ランダム共重合体の精密合成とユニマーミセル:Macromolecules 2014, 47, 598-600 [link]
  • 両親媒性ランダム共重合体の水中制御自己組織化:Macromolecules 2016, 49, 5084-5091 [link]
  • ランダム共重合体ミセルのサイズと温度応答性の制御:Macromolecules 2018, 51, 398-40 [link]
  • 両親媒性ホモポリマーの単分散ミセル:Polym. Chem. 2020, 11, 5156-5162 [link]
  • 両親媒性交互共重合体の単分散ミセル:Macromolecules 2023, 56, 6986-6098 [link]
  • ダブルコア/マルチコンパートメントポリマー:J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 7164-7167. [link]
 
 

2. 動的に識別するセルフソーティングポリマーミセル

両親媒性ランダム共重合体を用いると、構造の異なる共重合体が共存する多成分混合系においても、自己組織化を精密に制御することができます。

例えば、組成や疎水性側鎖構造の異なるPEG系ランダム共重合体を水中で混合すると、それぞれのポリマーが互いの分子構造を識別し、同種のポリマー同士が選択的かつ動的に会合することで、異なるポリマーミセルを同時に形成するセルフソーティング挙動を示します。一方、PEG系ランダム共重合体と組成の異なるイオン性ランダム共重合体を混合した場合には、純水中では両者が共自己組織化して融合ミセルを形成するのに対し、塩を含む水中ではセルフソーティングが誘起され、それぞれ独立したミセルを形成します。

このように、ポリマーの分子構造だけでなく、水環境も設計因子として利用することで、多成分ポリマーの自己組織化を自在に制御できる動的セルフソーティングシステムを構築できます。さらに、このセルフソーティングミセルを基盤として、自己修復性と選択的接着性を兼ね備えたハイドロゲルなど、新たな機能性高分子材料の設計へと展開しています。
2. 動的に識別するセルフソーティングポリマーミセル
2. 動的に識別するセルフソーティングポリマーミセル

<関連論文>
  • 動的セルフソーティングミセル:J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 511-519 [link]
  • 共自己組織化とセルフソーティングの可逆制御:Macromolecules 2022, 55, 5213-5221 [link]
  • 多成分混合系のセルフソーティングミセル:J. Am. Chem. Soc. 2024, 146, 30848-30859 [link]
  • 光応答性セルフソーティングミセル:Chem. Sci. 2025, 16, 23103-23110  [link]
  • ランダム/交互共重合体ミセルの動的鎖交換:Macromolecules 2023, 56, 2955-2964  [link]、Small 2026, 22, e14801  [link]
  • セルフソーティングミセルを用いたハイドロゲル:Aggregate 2023, 4, e316.  [link]
 
 

3. 側鎖型ミクロ相分離によるナノ構造材料

PEG鎖や水酸基、イオン性基などの親水性側鎖とアルキル基などの疎水性側鎖を有するランダム共重合体および交互共重合体は、バルクや薄膜中において側鎖の自己組織化により、ドメイン間隔が10 nm以下のラメラ構造をはじめとする多様なナノ相分離構造を形成します。

この側鎖型ミクロ相分離では、共重合体の組成と側鎖構造を設計することで、ドメイン間隔を約0.1 nm(原子レベル)の精度で自在に制御することが可能です。さらに、吸湿性を有するイオン性共重合体は、外部環境から水を吸収することで規則的なミクロ相分離構造を誘起します。

この特性を活かすことで、ナノスケールの相分離構造制御や湿度に応答するラメラ構造材料の設計が可能となり、環境応答性ナノ構造材料の創製へと展開しています。
3. 側鎖型ミクロ相分離によるナノ構造材料

<関連論文>
  • 側鎖型ミクロ相分離とナノ構造材料:J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 8376-8379  [link]
  • 積層化ラメラ構造薄膜の形成と構造解析:ACS Macro Lett. 2021, 10, 1524-1528  [link]
  • 水によるミクロ相分離構造の誘起とカチオン性ラメラ構造材料:Macromolecules 2022, 55, 9113-9125  [link]
  • 側鎖型ミクロ相分離構造の制御:ACS Macro Lett. 2024, 13, 747-753  [link]
  • 水を含み湿度に応答するラメラ構造材料:J. Am. Chem. Soc. 2025, 147, 6727-6738  [link]
 
 

4. 精密高分子合成と機能性材料設計

リビングラジカル重合をはじめとする精密重合技術や独自開発の重合系を駆使し、高分子の分子構造を制御する精密合成法の確立に取り組んでいます。

これにより、両親媒性自己組織化ポリマー、グラジエント/配列制御ポリマー、末端・局所機能化ポリマー、環状骨格ポリマー、機能性星型ポリマーなど、特異な構造と機能を有する高分子材料の創製を実現しています。
4. 精密高分子合成と機能性材料設計
 
 

5. 精密カチオン重合系の構築と異種モノマーのカチオン共重合系の開発

合成高分子の一次構造制御は、高分子の性質・機能の制御につながるため非常に重要です。
本研究では、分子量、モノマー配列、分解性部位などが精密に制御された高分子の合成に向けて、精密カチオン重合系の構築をおこなっています。

とくに、ビニルモノマーと環状モノマーなど異種モノマーのカチオン共重合系を構築し、異種モノマー間の反応ならではの選択性を巧みに用いた高分子合成研究を展開しています。

具体的には、従来進行しないとされてきたビニルモノマーとオキシラン(エポキシド)のカチオン共重合系の開発、種々の環員数・置換基をもつ環状アセタールを用いた共重合系の構築、特定の交差生長反応により進行しABC周期配列制御が可能なカチオン三元共重合系の開発、カチオン単独重合性は示さないが適切なモノマーと組み合わせるとカチオン共重合性を発揮する新規コモノマーの開拓、異なる種類の環状モノマーのカチオン開環共重合系の開発、新規リビングカチオン重合系の構築とリビング共重合への展開などをおこなっています。 
 
5. 精密カチオン重合系の構築と異種モノマーのカチオン共重合系の開発

<関連論文>
  • ビニルエーテルとオキシランのビニル付加・開環カチオン共重合系の開発:J. Am. Chem. Sci. 2013, 135, 9330–9333.  [link]
  • 配列制御カチオン三元共重合系の構築:Macromolecules 2019, 52, 7572–7583.  [link]
  • 環状ヘミアセタールエステルとオキシランのカチオン共重合:Macromolecules 2019, 8, 128–133.  [link]
  • 酢酸ビニルと環状モノマーのカチオン交互共重合:Macromolecules 2022, 55, 6110–6119.  [link]
  • 環状アセタールと環状ヘミアセタールエステルのカチオン開環共重合:Macromolecules 2023, 56, 5524–5533.  [link]
  • オキシランのリビングカチオン開環重合系の開発:Macromolecules 2025, 58, 8225–8234.  [link]
HOME