大阪大学大学院理学研究科 附属基礎理学プロジェクト研究センター 原田グループ ロゴ
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シクロデキストリン(CD)とは
ポリロタキサンの合成 (Molecular Necklace)
分子チューブの合成 (Molecular Tube)
ダブルストランド型ポリロタキサン


分子チューブの合成 (Molecular Tube)


ポリロタキサンから分子チューブへ

ポリロタキサンは一次元ポリマーに沿って多くのシクロデキストリンが並んでいるので、それらを結合して中のポリマーを抜くことができれば、分子状の細長いチューブができることになる。特にシクロデキストリンはある程度の深さ(約7A)の深さがあり、環の両端には多くの水酸基があるのでこれらを利用して隣同士のシクロデキストリンを結合することができる。
ポリロタキサンを15%の水酸化ナトリウムの水溶液に溶かし、エピクロロヒドリンを過剰に加え、シクロデキストリン同士の架橋を行った。これを中和して生成物を取りだしたところ、ポリロタキサンの構造を保ったまま架橋反応が進行していることが分かった。
この生成物をさらに20%水酸化ナトリウム水溶液に溶かし、加熱すると今度は架橋されたままで末端のかさ高い置換基が切断される。それに伴い中のポリマーも抜け出て、目的のチューブ状のポリマーが得られた。


図1.分子チューブの合成 (Molecular Tube)

生体内では種々のチューブ状のポリマーが生命を維持するために重要な役割を果たしている。例えば微小管(マイクロチューブリン)は種々の分子やイオンの通り道として、あるいは運動器官(絨毛、べん毛、筋肉など)として機能している。
ところがこれまで合成ではこのような細いチューブは作れなかった。これまで最も細いチューブはフラーレンと同様に作られたカーボンナノチューブであったが、この場合直径は数ナノメーターから数百ナノメーターである。しかしシクロデキストリンから作られたこの分子チューブは直径0.4ナノメーターと細く、またグルコース(糖)からできているので生体内に入れることが可能である。そのためシクロデキストリンのチューブはいろいろな医薬品の分子カプセルとして、あるいは種々の分子やイオンの分離や選択的な透過のための材料として様々な用途が考えられる。

A. Harada, J. Li, and M. Kamachi
"Synthesis of a Tubular Polymer from Threaded Cyclodextrins"
Nature, 1993, 364 (6437), 516-518.

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