大阪大学大学院理学研究科 附属基礎理学プロジェクト研究センター 原田グループ ロゴ
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シクロデキストリン(CD)を用いた超分子合成

修飾CDを用いた超分子錯体の合成 CDによる高分子鎖の認識挙動の解明
外部刺激による超分子錯体の構造制御 超分子エネルギー変換システムの開発
共役分子を有す超分子錯体の合成 Social Self-Sorting型超分子錯体CD
シクロデキストリンを用いた並進・回転運動の観察 挿し違いダイマー

修飾CDを用いた超分子錯体の合成

ポリ[2]ロタキサン

広い口側の二級水酸基にゲスト分子を修飾することにより、ゲスト分子が分子間での連続的に取り込み、超分子ポリマーの形成を行った。シクロデキストリンの3位に桂皮酸をアミド結合で結合したところ、分子間での取り込みが連続して起こり、超分子ポリマーが形成されることを明らかとなった。さらにアミノ桂皮酸をゲスト分子として用い、水溶液中にて超分子ポリマーを形成した後、かさ高いトリニトロベンゼンスルホン酸と反応させることにより、ポリ[2] ロタキサン(Daisy Chain)が得られた。

広い口側の二級水酸基にゲスト分子が修飾されたCDによるポリ[2]ロタキサン合成
広い口側の二級水酸基にゲスト分子が修飾されたCDによるポリ[2]ロタキサン合成

Atsuhisa Miyawaki, Masahiko Miyauchi, Yoshinori Takashima, Hiroyasu Yamaguchi and Akira Harada "Formation of supramolecular isomers; poly[2]rotaxane and supramolecular assembly"
Chem. Commun., 2008(4), 456 - 458,

らせん超分子ポリマー

CDの空洞は不斉場であり、適切な条件を整えることにより、特定の立体配置を持った超分子ポリマーの形成が期待される。α-CDが強く取り込むtert-ブトキシカルボニル基(tert-Boc基)をアミノ桂皮酸部分に結合したところ、その分子は希薄水溶液中でも長い超分子ポリマーを形成した。CDと桂皮酸、桂皮酸同士がどのような立体配置を取っているのかを検討するために、円二色スペクトルと走査型トンネル顕微鏡にて超分子ポリマーの形態を調べた。その結果、形成された超分子ポリマーは水溶液中で左巻きのらせん(へリックス)を形成している事が明らかとなった。

修飾CDにより形成されたらせん超分子ポリマー
修飾CDにより形成されたらせん超分子ポリマー

Miyauchi, M.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
"Chiral Supramolecular Polymers Formed by Host-Guest Interactions"
J. Am. Chem. Soc. 2005, 127(9), 2984-2989.  

 

α-, β-CD交互共重合体

α-CDの二級水酸基にアダマンタンカルボン酸を結合したところ、アダマンタン部分はα-CD内には取り込まれないが、tert-Bocアミノ桂皮酸を結合したβ-CDには取り込まれ、2量体を形成した。アダマンチル基によりβ-CD の空孔内部から水中に押し出されたtert-Bocアミノ桂皮酸部分は別の分子のα-CD誘導体の空洞内に取り込まれ、この超分子錯体形成が連続的に起こる事により、α-CDとβ-CDが交互に並んだ超分子ポリマーが得られた。

図14.-CDと-CDが交互に並んだ超分子ポリマー
α-CDとβ-CDが交互に並んだ超分子ポリマー

Miyauchi, M.; Harada, A.
"Construction of Supramolecular Polymers with Alternating a-, b-Cyclodextrin Units Using Conformational Change Induced by Competitive Guests"
J. Am. Chem. Soc. 2004, 126(37), 11418-11419.

 

 [2]ロタキサンポリマー

これまでの超分子化学において、形成されたロタキサンをさらに大きな超分子構造体の構築に使用した例は無かった。これはストッパーはあくまで環状成分を軸分子に閉じ込めるための役割としか考えていなかった。一方、ストッパーは環状成分を閉じ込めるために十分な嵩高さを有しており、適切なホスト分子を填め込めば、ストッパーをゲスト分子として使用することができる。このロタキサンはDMSOなどの溶媒中では単量体の[2]ロタキサンとして存在するが、高濃度水溶液中ではトリニトロフェニル基がβ-CDに対するゲスト分子となるために会合体形成が進み、超分子ポリマー([2]ロタキサンポリマー)を形成した。

[2]ロタキサンを構成単位とする超分子ポリマー([2]ロタキサンポリマー)
[2]ロタキサンを構成単位とする超分子ポリマー([2]ロタキサンポリマー)

Miyauchi, M.; Hoshino, T.; Yamaguchi, H.; Kamitori, S.; Harada, A.  
"A [2]Rotaxane Capped by a Cyclodextrin and a Guest: Formation of Supramolecular [2]Rotaxane Polymer"
J. Am. Chem. Soc.  2005, 127(7), 2034-2035.  

 

 

超分子環状オリゴマー

α-CDの6位にアミノ桂皮酸をエステル結合した分子は水中で3量体を形成した。筆者らはこの3量体にα-CDが通過できないかさ高いトリニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(Sodium trinitrobenezene sulphonate)と反応させ、有機溶媒中においても解離しない環状3量体(Cyclic Daisy Chain)を得た。


トリニトロベンゼンをストッパーとしたアミノ桂皮酸修飾α-CDからなる環状3量体

Hoshino, T.; Miyauchi, M.; Kawaguchi, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
"Daisy Chain Necklace: Tri[2]rotaxane Containing Cyclodextrins. "
J. Am. Chem. Soc., 2000 , 122(40), 9876-9877.

 

シクロデキストリンダイマーを用いた超分子ポリマー形成

CDダイマーとゲストダイマーを用いて超分子ポリマーが構築された。ゲスト分子の柔軟性に依存して、形成される超分子ポリマーの構造が異なる事が報告されている。剛直なゲスト分子を用いた場合、高分子量の超分子ポリマーの形成が示唆されたが、柔軟なスペーサーを有するゲストダイマーを使用した場合、環状の超分子オリゴマーの形成が示唆された。


β-CDダイマーとゲストダイマーを用いた超分子ポリマー形成。
ゲストダイマーの柔軟性により、形成される超分子錯体構造が異なる。

Ohga, K.; Takashima, Y.; Takahashi, H.; Kawaguchi, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.  
"Preparation of Supramolecular Polymers from a Cyclodextrin Dimer and Ditopic Guest Molecules: Control of Structure by Linker Flexibility"
Macromolecules 2005, 38 (14), 5897-5904.

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