大阪大学大学院理学研究科 附属基礎理学プロジェクト研究センター 原田グループ ロゴ
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シクロデキストリン(CD)を用いた超分子合成

修飾CDを用いた超分子錯体の合成 CDによる高分子鎖の認識挙動の解明
外部刺激による超分子錯体の構造制御 超分子エネルギー変換システムの開発
共役分子を有す超分子錯体の合成 Social Self-Sorting型超分子錯体CD
シクロデキストリンを用いた並進・回転運動の観察 挿し違いダイマー

シクロデキストリンを用いた並進・回転運動の観察

末端のCDのグルコピラノースユニットの回転運動を通した輪分子のシャトリングの観察

 CDにアルキル鎖を修飾した化合物を軸分子としロタキサンを合成した。従来のロタキサンでは輪分子のシャトリングは軸分子と輪分子の相互作用により制御されていたが、本系では軸分子のCDがストッパーとして単に嵩高いだけでなく、軸分子を取り込む機能を利用して、輪分子のシャトリングの変化を観察した。
 その結果、 [2]ロタキサンでは、メタノールおよびDMSO-d6中でローターはアルキル鎖を包接していた。一方、水中では、ローターはスチルベン部位を包接し、ストッパーのCDの一部のユニットが宙返り(タンブリング)を起こし、アルキル鎖を包接していた。従来のシャトリングの制御方法として、軸分子とローターの相互作用によりシャトリングを制御するものであった。本系ではローターにCDを、ストッパーとして単に嵩高いだけでなく、軸分子を巻き取る機能を利用して、ロタキサンのシャトリングの制御することに成功した. (図1)

図1. 末端のCDの宙返りを利用した輪分子のシャトリング制御 .
Yamauchi, K.; Miyawaki, A.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
"A Molecular Reel: Shuttling of a Rotor by Tumbling of a Macrocycle "
J. Org. Chem. 2010, 75, 1040-1046.



CDダイマーのグルコピラノースユニットの回転運動を通した[1]ロタキサンダイマーの観察

 超分子化学の発展と伴に様々なホスト化合物が世の中に登場した。カリックス[n]アレーンはCDと並ぶ代表的なホスト化合物であり、そのユニットは宙返り(タンブリングまたはフリップ)することが知られている。CDも水酸基をメチル化された化合物は宙返りすることが報告されている。一方で未修飾のCDはグルコピラノース間の水素結合形成により、グルコピラノースは宙返りしないと考えられてきた。私たちはCDの直近に柔軟なアルキル鎖を修飾したαCD ダイマーの構造についての詳細な検討を行った。
 1H NMR測定の結果、メタノール中ではアルキル鎖のシグナルが分裂しないのに対し、水中においてはシグナルの分裂が確認され、水中においてアルキル鎖がCDの空孔内に包接されたことを示す。このスペクトル変化には溶液濃度依存性は見られないため、分子間錯体ではないと考えられる。重水中におけるαCD ダイマーの超分子構造体について検討するために二次元ROESYを測定した。その結果、(1)広い口側の二級水酸基と修飾部位近傍のアルキル鎖のプロトンと(2)狭い口側の一級水酸基とアルキル鎖中央部のプロトンとの間に明確なROE相関が観測された。
 この結果はアルキル鎖がCD空洞内に引き込まれ包接錯体を形成したのではなく、グルコピラノースユニットの宙返りによって実現されたpseudo[1]ロタキサンダイマーであると考えられる。速度論的解析の結果、宙返りの速度は6.5810-4 s-1 (288 K)でありGo = -8.1 kJ•mol-1 (288 K) であることが明らかと成った。また非包接状態のαCD ダイマーから包接状態のpseudo[1]ロタキサンダイマーへの構造変化には高い活性化自由エネルギー(G‡288K = 88.0 kJ•mol-1)を必要とする。これは、αCDが持つ水酸基間の水素結合を切断し、グルコピラノースユニットの宙返りするのに必要なエネルギーであると考えられる. (図2)

図2. 長鎖アルキル基により架橋されたCDダイマーのグルコピラノースユニットの回転運動を通した
[1]ロタキサンダイマーの形成

Yamauchi, K.; Miyawaki, A.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
"Switching from altro-α-Cyclodextrin Dimer to pseudo[1]Rotaxane Dimer through Tumbling"
Org. Lett. 2010, 12, 1284-1286.

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