大阪大学大学院理学研究科 附属基礎理学プロジェクト研究センター 原田グループ ロゴ
  English

シクロデキストリンを用いた強靭性材料

現在用いられている高分子材料において、高分子架橋型の材料は一般に脆く、少しの変形で容易に壊れてしまう。また何らかの要因で材料に傷やひびが入ると、力がかかった際にその点に力が集中することで簡単に裂け、亀裂が進展して壊れてしまう。さらに一度壊れたものは基本的には元に戻ることがなく、使い捨てを余儀なくされている。通常の高分子材料は、切れると戻らない非可逆的な結合によって架橋されており、材料内部の分子運動が制限されていることがこれらの問題を引き起こしている。

そこで、材料を構成する高分子間にシクロデキストリンとゲスト分子からなる可逆的な結合を導入した。対応するモノマーを重合させることにより、透明で自立性を有し流れることのないヒドロゲルが得られた。得られた材料は次に示すような優れた特徴を示した。

(1) 伸縮性:得られた材料は10倍以上の長さまで伸ばしても切れることがなく、かつ可逆的に伸び縮みさせることができた。可逆的な結合による力の分散により、このような高い伸縮性が発現されたと考えられる。

(2) 強靭性:この材料に鉛筆やカッターの刃のような鋭いものを突き立てても貫通することはなく、非常に切れにくかった。可逆的な結合が力を分散し、傷の進展を防ぐことによりこのような性質が現われたと考えられる。

(3) 自己修復性:強い力をかけて材料を二つに切断し、切断面同士を再接触させることで切断面が再び接着した。切っても繋がる結合の性質がそのまま材料の性質として現れたと考えられる。

この材料は生体適合性に加えて成型加工性もあり、複雑な形状の生体組織のような用途にも対応可能である。工業用途、医療用途等の幅広い分野への応用展開が期待される。

(Nakahata, M.; Takashima, Y.; Harada, A. Macromol. Rapid Commun. 2016, 37, 86-92.)

ページのTOPへ