Synthesis of CCL-1 and its quasi racemic crystallization

[要約]

このページでは、化学合成したN型糖鎖全長をもつ糖タンパク質のX線結晶構造解析に岡本らがはじめて成功したことを述べる

CCL1

CCL-1はケモカインファミリーの糖タンパク質である。CCL-1は血球細胞の走化性やアポトーシスにおいて重要な機能を果たしているが、そのN-糖鎖の機能は十分に解明されていない。2014年、OkamotoとKentのグループは、生物学的活性を調べるために、高純度なN-グリコシル化CCL1とSer-CCL1の化学合成を報告した[27a]。従来のFmoc SPPSでは糖ペプチドチオエステルを生成できなかったが、ジアミノ安息香酸(Dbz)をリンカーとして使用することで、この問題を解決し、NCL用の糖ペプチド-Nbz 76を得ることができた。3つのセグメント75-77を用いた収束型NCLは、糖鎖を持つ完全長CCL-1 79を効率よく得ることができた(図8:2糖鎖を持つCCL1の全合成戦略)。同じプロトコールに従って、非グリコシル化CCL1、グリコシル化および非グリコシル化Ser-CCL1も効率よく合成された。4つの合成(糖)タンパク質を用いて、N型糖鎖の機能を解明するために、CCR8受容体を導入した細胞株を用いた走化性アッセイを実施した。その結果、興味深いことに、N-グリコシル化CCL1は、非グリコシル化CCL1に比べて走化性活性の低下を示し、N-グリコシル化がCCL1の生物学的機能の他の側面に影響を与えている可能性が示唆された。 さらに、岡本とケントグループは世界ではじめて糖タンパク質の結晶化を報告した。通常、糖鎖はタンパク質上で揺らぐため、糖タンパク質の結晶化を阻害することが知られている。Kentグループは多くの例でラセミ結晶化に成功していた。そこで、岡本とKentグループは、L-糖タンパク質とその対となる非糖鎖D-タンパク質の結晶化を検討した。このアイデアは見事に成功し、それらラセミ状態のX線結晶構造解析に成功した。そして、このデータにより糖タンパク質の化学合成が、個々のアミノ酸のラセミ化を伴わない高純度な糖タンパク質を与えることを明確に示した[27b]。