作用機序・機能解明ツールの開発
小型蛍光プローブ1,3a,6a-トリアザペンタレン
バイオイメージング技術や有機発光性材料などの急速な進展により、新たな機能を有する蛍光性分子及びその実用的供給法の開発が強く求められています。 当研究室では、特異な10π系芳香族化合物であるトリアザペンタレン類 (TAP) が、コンパクトでありながら強い蛍光を示す優れた蛍光発色団であることを見出し、その簡便な合成法を確立しました。 トリアザペンタレン類は、大きなストークスシフトと強いソルバト蛍光クロミズムを示すことに加え、2 位置換基の電子的要因に応じて蛍光波長が大きく変化する興味深い性質を示します。 これにより、蛍光発色団の物性を殆ど変化させることなく、色調のみを自在に制御できる画期的なコンパクト蛍光分子の提供が可能となりました。 この技術を基に開発された細胞染色試薬は現在フナコシから市販されています。 また、TAPを用いることで、分子量わずか217の血圧降下剤の血管内皮細胞での挙動観察にも成功しており、低分子生物活性化合物の蛍光標識基として有用であることが明らかにされています。
現在では、このトリアザペンタレンを利用し以下の研究課題に取り組んでいます。
- がん光免疫療法の低分子化
- 歯周病の簡易検査キットの開発
- 細胞と共生微生物との関係を明らかにする分子プローブ開発

- Namba, K.; Osawa, A.; Ishizaka, S.; Kitamura, N.; Tanino, K. J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 11466.
- Namba, K.; Mera, A.; Osawa, A.; Sakuda, E.; Kitamura, N.; Tanino, K. Org. Lett. 2012, 14, 5554.