研究紹介(少し前の論文から)
"Synthesis and Characterization of 2,6-Di-tert-butyl-1-thio-1,4-benzoquinone, the First Isolable Monothio-1,4-benzoquinone."
Riho Suzuki, Kouzou Matsumoto, Hiroyuki Kurata, and Masaji Oda, Chem. Commun., 2000, 1357-1358.
表題化合物は不安定であるがtert-ブチル基の立体的な保護により安定化されるため単離可能な化合物である。このものは相当するp-ベンゾキノンよりも電子親和性が高く水により還元される。
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"Synthesis, Structure, and Properties of Hexaaryl[3]radialenes."
Tetsuya Enomoto, Naoki Nishigaki, Hiroyuki Kurata, and Masaji Oda, Bull. Chem.
Soc. Jpn., 73, 2109-2114 (2000).
ヘキサフェニル[3]ラジアレン誘導体をテトラクロロシクロプロペンとジアリールメチルアニオンとを反応させ、続いて酸素で酸化することにより多数合成した。この反応はジアリールメタンの酸性度がジフェニルメタンよりも高いことが重要である。ヘキサキス(4−ヨードフェニル)[3]ラジアレンのヘキサリチオ化−ヘキサプロトン化により母体化合物のヘキサフェニル[3]ラジアレンを初めて合成した。これらの[3]ラジアレン類はオレンジ、あるいは赤色の結晶性の物質である。ヘキサキス(4−シアノフェニル)[3]ラジアレンのX線結晶構造解析からフェニル基はそれぞれが二枚重ねの3枚の羽根を有するプロペラ型の構造をしている事が分かった。
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"7,7,8,8-Tetra(2-thienyl)-p-quinodimethanes. New Electron-Donating p-Quinodimethanes."
Hiroyuki Kurata, Maki Inase, and Masaji Oda, Chem. Lett., 1999, 519-520.
表題化合物を電子供与性を有する新規なp-キノジメタン類として合成した。このものは優れた両性酸化還元能を示した。特にテトラメチルチオ体は電子供与能が高く、ヨウ素、TCNQ、TCNQ-F4と電荷移動錯体を形成した。
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"2,6-Di-tert-butyl-4-diarylmethylene-2,5-cyclohexadiene-1-thiones. First
Isolable Unannelated Thioquinone Methides."
Riho Suzuki, Hiroyuki Kurata, Takeshi Kawase, and Masaji Oda, Chem. Lett.,
1999,
571-572.
表題化合物が縮環していないチオキノメチドとして不安定ではあるもののtert-ブチル基の立体保護の効果がきいて初めて単離に成功した。このものは相当するキノメチドに比べてより高度に分極し、また、より大きな電子受容能を示した。
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"8,16,24,32-Tetramethoxy[2.2.2.2]metacyclophane-1,9,17,25-tetrayne: A Novel
Ionophore Having a Preorganized but Unexpectedly Flexible Cavity."
Takeshi Kawase, Yoichi Hosokawa, Hiroyuki Kurata, and Masaji Oda, Chem. Lett.,
1999, 745-746.
表題のシクロファンは直径約1.2オングストロームの、四つの酸素原子で囲まれた予備組織化された空孔を有している。しかしながら、ピクリル酸のアルカリ金属塩を用いた溶媒抽出実験において、予想に反して種々のアルカリ金属イオンとかなり大きな会合定数を有する1:1錯体を形成することから、この空孔が自由度の高い性質を有している事が明らかとなった。
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"Dibenzoannulated
3,5,3'',5''-Tetra(t-butyl)-p-terphenoquinone. A Reversible,
Photochemical-Thermal Switching System Involving Restricted Conformational
Change."
Hiroyuki Kurata, Tomomi Tanaka and Masaji Oda, Chem. Lett.,1999, 749-750.
新規なターフェノキノン誘導体である表題化合物はCV 法において動的酸化還元挙動を示し、キノン型とビラジカル型との間で光化学的−熱的に可逆な異性化がおこる。X線結晶構造解析によると表題化合物はキノン型でバタフライ構造をしており、キノメチド部位はアントラセン平面に対し約36°傾いている。
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