大阪大学

大学院理学研究科
高分子科学専攻 高分子材料設計学

研究テーマ - Research Theme

超分子アクチュエータ

我々は超分子を用いた刺激応答性超分子材料を作製するに当たり、二つのアプローチを試みた。一つは架橋密度を変化させる方法と架橋点間距離を変化させる方法である。一方は可逆的な結合の形成と解離を利用した超分子ゲルで有るのに対し、もう一方は高分子鎖間が機械的に連結された構造であるため、トポロジカルゲルに分類される。

光刺激応答性超分子ゲル

α-シクロデキストリン (αCD) とアゾベンゼン (Azo) との組み合わせにより、光刺激に応答して伸縮・屈曲するアクチュエータを構築した。このヒドロゲルに対して化学刺激、光刺激を与えることでゲル内の超分子構造を変化させ、ゲルの可逆的膨潤-収縮を実現した。ヒドロゲル内で形成された超分子架橋が光刺激応答性のホスト-ゲスト包接錯体であることに着目し、光刺激に応じた可逆的な膨潤-収縮性を検討した。αCD-Azo gel を5×5×2 mm3 に切り出し、UV光( λ = 365 nm)を1時間照射した。その結果、最大40%の重量増大が確認された。続いて、Vis光( λ = 430 nm )を1時間照射すると、UV光照射前の重量まで戻った。光の波長に応じて超分子架橋が可逆的に形成-解離することで、ゲルが可逆的に膨潤-収縮したものと考えられる。αCD-Azo gel を平板状に成形して、UV光をαCD-Azo gel の片面に対して照射すると、大きく屈曲した。続いてVis光を照射すると、元の状態に戻り、繰り返し行えることも明らかとなった。屈曲現象が観測された原因として、光照射面の Azo が異性化することで照射面が優先的に膨潤収縮したためと考えられる。

Takashima, Y.; Hatanaka, S.; Otsubo, M.; Nakahata, M.; Kakuta, T.; Hashidzume, A.; Yamaguchi, H.; Harada, A., Nat. Commun. 2012, 3, 1270.

酸化還元応答性超分子ゲル

本研究では、β-シクロデキストリン (βCD) とフェロセン (Fc) との包接錯体による超分子的な架橋を導入した高分子ヒドロゲルを作製し、Fc 部位の酸化還元に応答した包接錯体の会合-解離を制御することで筋肉のように可逆的に伸縮するヒドロゲルの開発を試みた。さらに、酸化還元のエネルギーを外部に対する力学的仕事に変換する駆動素子(アクチュエータ)を作製した。
Fc 部位の酸化状態を変化させることでゲルの膨潤-収縮を制御した。還元状態の Fc は βCD と包接錯体を形成するが、Fc を酸化してフェロセニウムカチオン (Fc+) とすると βCD に包接されなくなることが知られている。βCD-Fc gel を、酸化剤(硝酸セリウム(IV)アンモニウム)の水溶液へ浸漬させたところ、ゲルは Fc に由来する橙色から Fc+ に由来する緑色へと変化し、膨潤した。ゲル内部の酸化剤を取り除いたところ、ゲルは元の橙色へと戻りサイズも元へと戻った。このような傾向は少なくとも3サイクルに渡る酸化-還元に応じて観察され、ほぼ可逆的であった。
板状に加工した βCD-Fc gel におもりを取り付けたところ、酸化-還元サイクルに応じておもりを持ち上げることができた。すなわち、ゲルは酸化還元のエネルギーを力学的エネルギーに変換し、おもりに対して力学的仕事を行えるアクチュエータとして機能していることが明らかとなった。

Nakahata, M; Takashima, Y; Hashidzume, A.; Harada, A. Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52 (22), 5731-5735.

光刺激応答性トポロジカルゲル

本研究では、挿し違い構造である [c2] Daisy chainを架橋分子として、トポロジカルゲルを作製し、その光刺激応答性を調べた。高分子には四分岐ポリエチレングリコール (tetraPEG) を用い、αシクロデキストリン (αCD) とアゾベンゼン (Azo) からなる [c2] Daisy chainで機械的に架橋することで、ヒドロゲル ([c2] AzoCD2 hydrogel)を得た。水中にて薄い平板上の [c2] AzoCD2 hydrogel に紫外光を照射すると光源方向へと屈曲した。屈曲した [c2] AzoCD2 hydrogel に可視光を照射すると元の形体へと復元した。[c2] AzoCD2 hydrogel を凍結乾燥させた [c2] AzoCD2 xerogel の応答性を調べた。空気中で紫外光すると、[c2] AzoCD2 hydrogel よりも一万倍速く屈曲することが明らかとなった。

Iwaso, K.; Takashima, Y.; Harada, A. Nat. Chem. 2016, 8, 625-632.

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