研究テーマ - Research Theme
強靭性材料
ラジカル重合性CDモノマーを利用した強靭性材料の架橋設計

可動性架橋による無機高分子材料の強靭化
ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの無機高分子は、有機高分子と比べて力学特性が乏しいため、可動性架橋の導入により力学特性の向上を試みた。チオール変性PDMSにアクリルアミド修飾全アセチル化γ-シクロデキストリン(TAcγCD)をチオール-エン反応で修飾し、可動性架橋PDMS(PDMS-TAcγCD)を作製した(図a)。TAcγCD導入率が2 mol%のとき最大の靭性を示し、化学架橋PDMSの100倍の値を示した。可動性架橋を形成するTAcγCDが延伸に伴ってPDMS主鎖上を滑ることで架橋点への応力集中を緩和し、強靭化に寄与したと考えられる(図b)。

Yoshida, D. ;Park, J.; Yamashita, N.; Ikura, R.; Kato, N.; Kamei, M.; Ogura, K.; Igarashi, M.; Nakagawa, H.; Takashima, Y.,
Preparation of Mechanically Tough Poly(dimethyl siloxane) through the Incorporation of Acetylated Cyclodextrin-Based Topologically Movable Cross-links
Polym. Chem. 2023, 14, 3277-3285.
複数の可動性ネットワークとガラス状高分子の編込みによる複合化
可動性架橋設計は有機系高分子だけでなく無機系高分子において有効であることが分かった。2つの可動性ネットワークの組み合わせ、高分子の相溶性・靭性の向上を試みた。ガラス転移点が異なる複数の可動性架橋ネットワーク高分子を組み合わせた(図)。得られた複合材料は、硬さと伸びを兼ね備えた強靭性を示した。強靭化機構を大型放射光施設SPring-8にて引張試験と小角X線散乱 (SAXS) の同時測定から明らかにした。延伸過程において、硬い成分と柔らかい成分がそれぞれ独立して、多段階に変形していることが分かった。

Kawai, Y.; Park, J.; Murayama, S.; Ikura, R.; Osaki, M.; Konishi, T.; Matsuba, G.; Takashima, Y.,
Hybridizing a dual-cross network and a linear glassy polymer for dynamic contributions to high mechanical toughness based on phase-separated structures
Macromolecules 2023, 56, 4503-4512.
重付加性CD誘導体を利用した強靭性材料の架橋設計

複数種の高分子の可動性架橋による連結による複合化
可動性架橋を用いた高分子複合材料の作製と力学物性 シクロデキストリン(CD)修飾直鎖ポリマー存在下で主鎖モノマーの無溶媒重合を行い、CD環を主鎖が貫通した可動性架橋を有する分子編み込みによる高分子複合材料を作製した(図)。得られた材料は長い可動距離に基づく効率的な応力分散による強靭化に成功した。分子編み込みの設計を応用し、非相溶のPoly(ethyl acrylate)(PEA)とPolystyrene(PS)を可動性架橋で連結することにより、更なる強靭化とヤング率の向上を達成した。PEA相は高い運動性に基づき応力分散性を付与し、PS相はハードドメインとして寄与し、混合相により複数相の協奏的な働きを実現した。

Ikura, R.; Murayama, S.; Park, J.; Ikemoto, Y.; Osaki, M.; Yamaguchi, H.; Harada, A.; Matsuba, G.; Takashima, Y.,
Fabrication and Mechanical Properties of Knitted Dissimilar Polymeric Materials with Movable Cross-Links.
Molecular Systems Design & Engineering 2022, 7, 733-745.
無溶媒重合過程で形成した可動性架橋による強靭化
アセチル化疎水性CDモノマーを、液体主鎖モノマーのEthyl acrylate(EA)に溶解して塊状ラジカル共重合を行った。その結果,EA主鎖がCD環状を貫通した可動性架橋を有するエラストマーSingle movable cross-network(SC)が得られた(図)。この可動性架橋形成手法は、CD環に適切なサイズであれば様々な液体主鎖モノマーに適応可能であり、可動性架橋ヒドロゲルの創成にも成功している。SCエラストマーの引張試験を行ったところ、高い強度と伸びを示した。SCエラストマー内のCD環が主鎖上を「滑る」ことで、印加された応力を分散して強靭化に寄与したと考えられる。

Ikura, R.; Park, J.; Osaki, M.; Yamaguchi, H.; Harada, A.; Takashima, Y.,
Supramolecular Elastomers with Movable Cross-Linkers Showing High Fracture Energy Based on Stress Dispersion
Macromolecules 2019, 52(18), 6953-6962.