研究テーマ - Research Theme
超分子複合材料
高分子の架橋設計とセルロースの表面修飾によるセルロース複合材料の強靭化
天然由来のセルロースを高分子材料と複合化することは、石油由来材料の使用量削減につながり、環境負荷を低減する。セルロース複合材料中の高分子に独自の架橋設計を導入することで強靭化を達成した。

クエン酸修飾セルロース複合材料が水素結合によりもたらす高靭性とリサイクル性
本研究では、環境問題の一因となっている石油由来高分子材料の使用量削減を目指し、クエン酸修飾セルロース(CAC)を高重量比(33wt%)で複合化した新規材料を開発した。ポリマーマトリックスとフィラー間の水素結合による靭性向上メカニズムを解明するため、PHPA、PHEA、PMEAといった異なる側鎖構造を持つアクリレートポリマーを用い、ガラス転移温度、FT-IR、第一原理計算により相互作用を評価した。ヒドロキシ基を持つポリマーとCACフィラー間に形成される水素結合が、高セルロース含有量でありながら複合材料の靭性を大幅に向上させることが判明した。さらに、非共有結合的相互作用により機械的リサイクルが可能となり、破断・再成形による材料再生が実現した。この成果は石油依存の低減と材料の長寿命化につながると考えられる。

高分子の架橋設計とセルロースの表面修飾によるセルロース複合材料の強靭化
天然由来のセルロースを高分子材料と複合化することは、石油由来材料の使用量削減につながり、環境負荷を低減する。セルロース複合材料中の高分子に独自の架橋設計を導入することで強靭化を達成した。β-シクロデキストリン(βCD)とアダマンタン(Ad)からなる可逆性架橋を有する一次ポリマーと二次直鎖ポリマーの混合物(SCP)に、クエン酸変性セルロース(CAC)を複合化させた (SCP/CAC(w)) (図a)。CACの添加量w (wt%)が増加すると、SCP/CAC(w)の破断ひずみが増加した。特に、w = 5 wt%および10 wt%のとき高い靭性を維持した(図b)。SCP/CAC(10)は、未修飾セルロースと複合化した材料(SCP/Cellulose(10))よりも2倍以上高い延伸性を示した(図c)。一般に、高分子へセルロースを添加すると脆くなってしまうが、高分子の架橋設計とセルロースの表面修飾によって、靭性向上を達成した。

カーボン複合可動性架橋高分子材料を用いたひずみセンシングデバイスの開発
可動性架橋高分子と導電性カーボンフィラー(KB)を複合化し、強靭性と導電性を両立することでひずみセンシング材料を作製した(図a)。CD修飾ポリスチレン(PSCD)のCD環をポリエチルアクリレート(PEA)が貫通した可動性架橋高分子とKBを複合した材料(PSCD⊃PEA/KB(10))は、延伸時にCD環がPEAに沿ってスライド運動することで延伸性が向上した。さらに、延伸に伴ってKBの導電パスが変化するため、材料のひずみを電気抵抗値の変化として検出することに成功した。指に装着した複合材料は、電気抵抗変化(ΔR/R0%)に応じて、サーボモーターが同じ動作をするリモート作動システムとなり、ロボットの遠隔操作システムへの応用が期待される(図b)

セルロースと複合化した超分子材料
これまで可逆的な結合としてホスト-ゲスト相互作用を中心に検討してきたが、より強度の高い材料で高靭性を実現するため、複数の可逆性を架橋点の導入とフィラーの導入が重要と考えた。そこでクエン酸を側鎖に有するセルロース(大阪大学 宇山先生提供)と超分子エラストマーの複合を試みた。得られた複合材料は単体の超分子エラストマーにはない、強度と強靭性、切断面選択的な接着性を示した(下図a参照)