研究テーマ - Research Theme
その他
CD-Ruホスフィン触媒によるメタセシス重合
近年、水系での有機反応を行う超分子触媒が求められており、本研究では基質の認識部位および触媒の活性化部位を有する超分子触媒の合成を行い、水中での重合反応を試みた。基質の認識部位としてシクロデキストリン (CD) を基本骨格としたジシクロヘキシルホスフィン配位子を有するルテニウム錯体を合成し、水系での開環メタセシス重合の活性について検討した。
下図に示すように βCD にホスフィンを結合し、Ruを配位させた化合物を合成し、ノルボルネン誘導体の開環メタセシス重合 (ROMP) を行った。[モノマー]/[触媒] = 100で重合を行ったところ重合反応が進行し、ポリマーが得られた。有機溶媒中での反応と比べ PCy2-Ru-βCD を触媒として用いた重合では、ポリマーの収率および分子量は向上することがわかった。代表的な ROMP 触媒である RuCl3・3H2O および RuCl3・3H2O と tris(3-sulfonatephenyl)phosphine hydrate, sodium salt (TPPTS) との錯体を比較した結果、同条件下での重合反応においても重合反応は進行しなかった。モノマーよりも強く相互作用する競争ゲスト(アルコールやアダマンタンなど)を添加し重合することによって、重合反応の阻害が確認され、PCy2-Ru-βCD の有する CD 部位が重合反応に対して有効に作用することがわかった。

Takashima, Y.; Uramatsu, K.; Jomori, D.; Harima, A; Otsubo, M; Yamaguchi, H.; Harada, A
Ring-Opening Metathesis Polymerization by a Ru Phosphine Derivative of Cyclodextrin in Water
ACS Macro Lett. 2013, 2, 384-387. (DOI: 10.1021/mz4001942)
超分子エネルギー変換システムの開発
シクロデキストリン-オリゴチオフェンロタキサンを利用したエネルギー移動システム
近年、共役分子はその発光特性や電気的な性質から大きな注目を集めており、多くの研究がなされている。しかし、その特性を十分に発揮させるには高次構造の精密制御が必須となる。私たちはπ共役分子の構造制御を超分子科学的な手法を用いて行うため、CD と共役分子の組み合わせによる構造制御について検討してきた。本研究では、ロタキサンの末端 βCD 部位を利用し、ゲスト分子との混合系について、超分子形成とエネルギー移動について検討した。
ホストとして末端にゲスト分子を包接可能な βCD 部位を有する2T-[2]ロタキサンおよび3T-[2]ロタキサンを、ゲスト分子には、水溶性を有し、CDに包接される形状のオリゴチオフェン誘導体Disodium salt of 2,2':5',2'':5'',2''': 5''',2'''':5'''',2'''''-sexithiophene-3'',4'''-dicarboxylic acid (6TCA2Na2) を合成した。(下図参照)

6TCA2Na2は単体では強い発光を示さないが、6TCA2Na2とロタキサンを混合すると強い発光を示し、6TCA2Na2単体を直接励起 (λex = 424 nm) した場合よりも強い発光であった。これはロタキサンをドナー、6TCA2Na2をアクセプターとしたエネルギー移動が起こったと考えられる。更にロタキサン部位の発光の減少の度合いからエネルギー移動効率を算出すると、90%以上の高効率であることがわかった。一方で競争ゲストを過剰量添加した場合、混合系の蛍光スペクトルでは6TCA2Na2由来の発光が減少した。これはロタキサンと6TCA2Na2の錯体形成が阻害されたためと考えられる。これらの溶液を石英板上に塗布し、乾燥させると、より明確に発光強度の差が観察された。6TCA2Na2単体では自己消光されて、全く発光しないが、ロタキサンと6TCA2Na2の混合物は鮮やかな蛍光発光を示し、固体状態においても、効率よくエネルギー移動が起こった。(下図参照)

Sakamoto, K.; Takashima, Y.; Hamada, N.; Ichida, H.; Yamaguchi, H.; Yamamoto, H.; Harada, A.
Selective Photoinduced Energy Transfer from a Thiophene Rotaxane to Acceptor
Org. Lett. 2011, 13, 672-675.
センシングフィルムを目指したペリレンジイミド修飾シクロデキストリン化合物の発光制御
近年、ジアルキル置換ペリレンジイミド化合物は有機電界効果トランジスタ (OFETs) などに代表される光電子材料や蛍光センサーとして期待されている。一方でペリレンジイミド化合物 (PDIs) は一部の有機溶媒には溶解するものの、多くの有機溶媒に不溶であり、水や極性溶媒に対する溶解度は極めて低い。私たちは PDI の発光特性とシクロデキストリン (CD) の分子認識能を生かした効率の良い発光フィルムを合成し、その発光特性について調べた。


各種 PDI-CD ダイマーとポリビニルアルコール (PVA) 水溶液を混合、乾燥させたところ、CD の空孔サイズに応じた特異的発光特性を示すフィルムが得られ、特にPDIC7-3?CD2が強い発光性を示した。(下図参照)。

(上部) 可視光下 (下部) UV 照射下 (λex = 365 nm)
このフィルム作製は水溶液から行うことが重要で有機溶媒からは発光フィルムは得られず、CDの分子認識能とタンブリングが関係していると考えられる。今後、これらの発光性フィルムは化学物質を検出するフィルムとして応用が可能と考えられる。
Takashima, Y.; Fukui, Y.; Otsubo, M.; Hamada, N.; Yamaguchi, H.; Yamamoto, H.; Harada, A.
Emission Properties of Cyclodextrin Dimers Linked with Perylenediimide - Effect of Cyclodextrin Tumbling
Polymer Journal 2012, 44, 278-285.
CD ダイマーによるラクトンの重合
CD ダイマーを合成し触媒に用いたところ、CD ダイマーは CD モノマーより、さらに活性が高く、高分子量のポリマーを生成した。さらに CD を用いた場合、その生成物を精製してさらに重合を試みたところ、活性はみられなかったが、CD ダイマーを用いて得られた生成物(ポリマー)を触媒として、さらにモノマーを加えて重合を試みたところ、さらなる重合が進むことを見出した、これは CD ダイマーの一方が重合活性点として働きもう一方が生成したポリマーを引き出す役割をしているためであることを見出した。この役割はDNA重合酵素のクランプの働きに酷似している。CD ダイマーを用いることにより、分子量が数万のポリエステルを得ることができた。(下図参照)

Takashima, Y.; Osaki, M.;Ishimaru, M.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
Artificial Molecular Clamp: A Novel Device for Synthetic Polymerases
>Angew. Chem.,Int. Ed. 2011, 50, 7524-7528.
末端のCDのグルコピラノースユニットの回転運動を通した輪分子のシャトリングの観察
CDにアルキル鎖を修飾した化合物を軸分子としロタキサンを合成した。従来のロタキサンでは輪分子のシャトリングは軸分子と輪分子の相互作用により制御されていたが、本系では軸分子のCDがストッパーとして単に嵩高いだけでなく、軸分子を取り込む機能を利用して、輪分子のシャトリングの変化を観察した。
その結果、[2]ロタキサンでは、メタノールおよびDMSO-d6中でローターはアルキル鎖を包接していた。一方、水中では、ローターはスチルベン部位を包接し、ストッパーのCDの一部のユニットが宙返り(タンブリング)を起こし、アルキル鎖を包接していた。従来のシャトリングの制御方法として、軸分子とローターの相互作用によりシャトリングを制御するものであった。本系ではローターにCDを、ストッパーとして単に嵩高いだけでなく、軸分子を巻き取る機能を利用して、ロタキサンのシャトリングの制御することに成功した。(下図参照)

Yamauchi, K.; Miyawaki, A.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
A Molecular Reel: Shuttling of a Rotor by Tumbling of a Macrocycle
J. Org. Chem. 2010, 75, 1040-1046.
CDダイマーのグルコピラノースユニットの回転運動を通した[1]ロタキサンダイマーの観察
超分子化学の発展と伴に様々なホスト化合物が世の中に登場した。カリックス[n]アレーンはCDと並ぶ代表的なホスト化合物であり、そのユニットは宙返り(タンブリングまたはフリップ)することが知られている。CDも水酸基をメチル化された化合物は宙返りすることが報告されている。一方で未修飾のCDはグルコピラノース間の水素結合形成により、グルコピラノースは宙返りしないと考えられてきた。私たちはCDの直近に柔軟なアルキル鎖を修飾したαCDダイマーの構造についての詳細な検討を行った。
この結果はアルキル鎖がCD空洞内に引き込まれ包接錯体を形成したのではなく、グルコピラノースユニットの宙返りによって実現されたpseudo[1]ロタキサンダイマーであると考えられる。速度論的解析の結果、宙返りの速度は6.58e10-4 s-1 (288 K)でありGo = -8.1 kJ/mol-1 (288 K) であることが明らかと成った。また非包接状態のαCDダイマーから包接状態のpseudo[1]ロタキサンダイマーへの構造変化には高い活性化自由エネルギー(288K = 88.0 k/Jmol-1)を必要とする。これは、αCDが持つ水酸基間の水素結合を切断し、グルコピラノースユニットの宙返りするのに必要なエネルギーであると考えられる。(下図参照)

Yamauchi, K.; Miyawaki, A.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
Switching from altro-α-Cyclodextrin Dimer to pseudo[1]Rotaxane Dimer through Tumbling
Org. Lett. 2010, 12, 1284-1286.
Social Self-Sorting 型超分子錯体
CDの二級水酸基の置換位置により、形成される超分子錯体の構造が異なるのではないかと考え、桂皮酸を α-CD の二級水酸基の2位または3位にエステル結合にて導入し、超分子錯体形成挙動について調査した。
その結果、2位または3位に修飾された桂皮酸エステルが転位反応を示すだけでなく、単独状態と混合状態により形成される超分子錯体が異なるといった興味深い挙動を示した。

Tomimasu, N.; Kanaya, A.; Takashima,Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
Social Self-Sorting: Alternating Supramolecular Oligomer Consisting of Isomers
J. Am. Chem. Soc. 2009, 131 (34), 12339-12343.
光刺激に応じた超分子ポリマーの配列制御
単糖におけるアシル基転位反応は広く知られているが、α-D-グルコースを構成ユニットにもつ環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(CD)のアシル基転位反応についての詳細な報告はない。本研究ではアシル基としてαCDと会合定数の高いスチルベンをその二級水酸基に導入したところ、アシル基の転位反応によって生じる化合物のそれぞれが異なる超分子錯体を形成していることが明らかとなった。さらに今回、スチルベンの異性体に応じて転位速度が異なり、この速度が超分子構造に影響を受けていることを観察した。
超分子錯体形成によってアシル基の転位反応が抑制されることが示された。そこで、形成される超分子錯体の構造を調べるために 2D ROESY NMR 測定を行ったところ、2-StiO-αCDと3-StiO-αCDの混合溶液中においても同じ異性体同士(2-StiO-αCD 同士、及び3-StiO-αCD 同士)でホモ超分子錯体形成をすることが明らかとなった。(下図参照)

Kanaya, A.; Takashima, Y.; Harada A.
Double Threaded Dimer and Supramolecular Oligomer Formed by Stilbene Modified Cyclodextrin? Effect of Acyl Migration and Photo Stimuli
J. Org. Chem. 2011, 76, 492-499.
挿し違いダイマー
シクロデキストリンを用いた超分子錯体の外部刺激による構造制御
CDの超分子錯体にて動的挙動を観察するために、桂皮酸修飾部位をアルキル鎖にて伸張した修飾CD合成し、水中にて挿し違い型ロタキサンダイマーを形成させた。その後、ストッパー分子を導入し、有機溶媒中においても解離しない挿し違い型ロタキサンダイマーを得ている。その伸縮挙動は溶媒極性の変化によりCDの包接位置が変化した。

Tsukagoshi, S.; Miyawaki, A.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
Contraction of Supramolecular Double-Threaded Dimer Formed by α-Cyclodextrin with a Long Alkyl Chain
Org. Lett. 2007, 9 (6), 1053-1055.
外部刺激による超分子錯体の構造制御
trans-スチルベン β-CDダイマーとゲストダイマーを用いて可逆的に超分子錯体の構造制御が試みられた。D2O中で両者を混合すると超分子錯体形成が示唆され、得られた錯体に350nmの光照射を行ったところ、Stilbeneの異性化が観察された。光照射前後の超分子錯体の分子サイズは光照射前の方が拡散係数が大きく(分子サイズが小さい)、光照射後には濃度に依存して拡散係数の減少が観測された。このことから、光照射前には挟み込み型の超分子ダイマーを形成し、光照射後には超分子ポリマーに変化する超分子錯体系の構築に成功した。

Kuad, P.; Miyawaki, A.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
External Stimulus-Responsive Supramolecular Structures Formed by a Stilbene Cyclodextrin Dimer
J. Am. Chem. Soc. 2007, 129 (42), 12630-12631.
α-CD の3位にゲスト分子としてtrans-スチルベンを1つ導入した修飾 α-CD を用いて超分子錯体を形成し、その超分子の構造制御に成功した。trans-スチルベン修飾 α-CD は水溶液中は差し違いダイマーを形成していることが単結晶X線構造解析により明らかとなった。さらに光照射によってcis化したcis-スチルベン修飾 α-CD は濃度変化1H-NMR測定の結果からスチルベン部位のピークシフトが観測され、CDスペクトル測定によりカップリングが観測された事から、分子間で超分子を形成していることが示唆された。しかし 2D ROESY NMR測定からはスチルベンと α-CD の内部のプロトンとの間に相関は観測されず、trans体とは異なり、cis体は包接を介さずスチルベン同士がスタックした超分子を形成していることが示された。このように光により超分子錯体の構造制御が可能である事が明らかとなった。

Yamauchi, K.; Takashima, Y.; Hashidzume, A.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
Switching between Supramolecular Dimer and Non-Threaded Supramolecular Self-Assembly of Stilbene Amide alpha-Cyclodextrin by Photoirradiation
J. Am. Chem. Soc. 2008, 130 (15), 5024-5025.
Polythiophene (PT) を軸分子とするポリロタキサン形成
Polythiophene (PT) は有機半導体の中でも広く利用されており、分子被覆導線として CD を用いたポリロタキサン形成に有効である。オリゴマーであるBithiophene (2T) は、β-CD, hydroxylpropyl-β-CD, 2,6-O-dimethyl-β-CD と1:1錯体を形成し、[2] ロタキサン構造を形成した。

カップリング反応を利用すると、2,6-O-Dimethyl-β-CD(DM-β-CD)と 2T よりPolythiopheneを軸分子としたポリ擬ロタキサンが形成した。

Takashima, Y.; Sakamoto, K.; Oizumi, Y.; Yamaguchi, H.; Kamitori, S.; Harada, A.
Complex Formation of Cyclodextrins with Various Thiophenes and Their Polymerization in Water: Preparation of pseudo-Polyrotaxanes Containing Poly(thiophene)s
J. Incl. Phenom. Macrocycl. Chem. 2006, 56 (1-2), 45-53.
オリゴチオフェン誘導体の両末端にβ-シクロデキストリン (β-CD) を修飾したポリロタキサンを作成した。β-CD の修飾によりオリゴチオフェンは水に溶解し、DM-β-CD の包接数、軸部分の鎖長が厳密に定まり、ロタキサンの特性評価が容易になった。

Sakamoto, K.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
Preparation and Properties of Rotaxanes Formed by Dimethyl-beta-cyclodextrin and Oligo(thiophene)s with beta-Cyclodextrin Stoppers
J. Org. Chem. 2007, 72 (2), 459-465
CDを用いた超分子触媒
シクロデキストリン (CD) は、その空孔内部に基質分子を取り込み、基質の起こすエステル加水分解などの反応を触媒することが知られています。これまでに、CD による酵素触媒モデル系が多く研究されてきましたが、これらの反応は、基質自体に高い反応性や厳しい反応条件が必要であったり、基質に対して大過剰量の CD が必要とされるため、これまで有機合成触媒として利用されることはありません。我々は CD のエステル結合に対する反応性を重合反応に利用できないか?と考え、水中にてポリエステルのモノマーであるラクトンを混合し、反応を行いましたが、ラクトンの加水分解反応が促進または抑制されるのみでした。

Takashima, Y.; Kawaguchi, Y.; Nakagawa, S.; Harada, A.
Inclusion Complex Formation and Hydrolysis of Lactones by Cyclodextrins
Chem. Lett. 2003, 32, 1122-1123.
そこで我々は CD と環状エステルを水のない系で反応させれば、加水分解ではなく、ポリエステルの合成が行えるのではないかと考え、CD による環状エステルの開環重合を試みました。乾燥した CD にポリエステルのモノマーであるラクトンを固相で混合し、100℃に加熱することで、高い収率でポリエステルを得ました。従来のラクトンの重合にて用いられる強力な反応性を有する有機試薬を用いなくとも、助触媒も必要とせず、固相中にて混合するだけで重合が進行します。これは CD の空孔が酵素のように反応場となっているため、反応場に取り込まれた分子のみが反応することが明らかとなりました。さらに得られたポリマー鎖は CD に一本のみ結合した構造である事が明らかとなりました。

Takashima, Y.; Osaki, M.; Harada, A.
Cyclodextrin-Initiated Polymerization of Cyclic Esters in Bulk: Formation of Polyester-Tethered Cyclodextrins
J. Am. Chem. Soc. 2004, 126 (42), 13588-13589.
Osaki, M.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
Polymerization of Lactones Initiated by Cyclodextrins: Effects of Cyclodextrins on the Initiation and Propagation Reactions
Macromolecules 2007, 40 (9), 3154-3158.
CD に光異性化が可能な置換基を導入し、置換基の構造変化によりモノマーの包接を制御することによって重合活性の制御を試みました。置換基である桂皮酸がトランス体の場合、CD はラクトンに対して重合活性を示したのに対し、桂皮酸がシス体の場合、重合活性は大きく抑制されました。これは CD の空孔をシス体の桂皮酸が立体障害となり、モノマーの進入・包接を阻害した為と考えられます。

Osaki, M.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
Switching of Polymerization Activity of Cinnamoyl-alpha-Cyclodextrin
Org. Biomol. Chem. 2009, 7, 1646 - 1651.
この重合において、活性種である CD だけでなく、成長したポリマー鎖のコンフォメーションを制御することも重合反応において重要で、生長するポリマー鎖はほかの CD によって包接されていました。このように、生長反応点となる CD とポリマー鎖を包接する CD の2つのCDが重要であることが判りました。まさにポリロタキサンの形成が重合活性に重要である事が明らかとなりました。

Osaki, M.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
An Artificial Molecular Chaperone: Poly-pseudo-rotaxane with an Extensible Axle
J. Am. Chem. Soc. 2007, 129 (46), 14452-14457.
Harada, A.; Osaki, M.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.
Ring-Opening Polymerization of Cyclic Esters by Cyclodextrins
Acc. Chem. Res. 2008, 41 (9), 1143-1152.
ウイルスの表面は特異的な分子認識部位をもち、球状多層構造を形成している。CD を用いて球状構造を形成できれば、球状分子表面にて重合が行えるのではないかと考え、研究に取り組みました。金ナノ粒子を鋳型にして CD を修飾し、その後、内部の金ナノ粒子をヨウ素にて溶かし、ジスルフィド結合を形成することにより球状分子を構築しました。金ナノ粒子をコアに有する球状分子はラクトンに対して重合活性を有しませんが、内部が空洞の CD 球状分子はラクトンに対する重合活性がある事がわかりました。さらに球状分子表面に生成したポリマー鎖をポリロタキサン構造にすることにより、さらに重合が行える事が明らかと成りました。

Osaki, M.; Takashima, Y.; Yamaguchi, H.; Harada, A.
Nanospheres with Polymerization Ability Coated by Polyrotaxane
J. Org. Chem. 2009, 74 (5), 1858-1863.