高分子試料の合成とcharacterization

高分子の物性研究では分子量依存性を議論することが多く、実験には正確に分子量がわかっている試料が不可欠です。また高分子物理の理論では、分子量分布のない高分子鎖について計算が行われるので、実験と理論の比較を行うとき、できるだけ分布の狭い試料について実験を行う必要があります。私たちの研究室では、試料のcharacterizationに特別な努力をはらっています。分子量と分子量分布がよくわかった試料ができれば、研究は半分できあがったと言っても過言ではありません。

図1 アニオン重合用の真空ライン 

分子量分布が狭い高分子試料を作る方法の一つにリビングアニオン重合があります。重合反応は水や酸素があると停止してしまうので、高真空のガラス容器中で行います。真空ラインの写真を図1に示しました。合成した試料の分子量および分子量分布は光散乱検出器をそなえたGPCで決定します。

また拡散係数の測定 の試料もアニオン重合で簡単に作ることができます。例えばポリイソプレン( モノマー単位をXと表わす)にアゾベンゼン(Az)を色素としてラベルする場合、次のような反応を利用しています。

XXXXXX...............XXXXX-Li + Cl-Az → XXXXXX...............XXXXX-Az + LiCl

ここでXXXXXX...............XXXXX-Liは、ブチルリチウムを開始剤として重合したリビングポリイソプレンで、末端がアニオンとなり、対イオンとしてリチウムが付いています。この反応の結果、アゾベンゼンAzがポリイソプレン鎖の末端に結合します。つまり重合停止反応をメタノールの代わりにアゾベンゼンの塩化物で行ったことになります。

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