NATOの資金援助を受けた強相関物性とナノシステムに関するInternational Workshopと International Conferenceが9月29日から10月6日までの間、ウクライナのヤルタで行われました。 Workshopの名称はAdvanced Research Workshop (ARW) on Nanotechnology in the Security Systemsであり、続いて行われたConference はInternational Conference of Electron Correlation in Nanostructures (ECN-2013)でした。前者は応用に向けた基礎物性の評価を主体にしており、後者はサイエンスを重視したものです。 開催は、センターに今年の7月から8月の間、客員教授として滞在されていたSergei P. Kruchinin先生と、スロベニアのJ. Bonca 先生で、ともに強相関物質の理論的な研究をされておられます。 このヤルタでのコンファレンスは2年ごとに過去5回開催されており、今年が第6回目になります。毎回、超伝導やナノテクノロジーに関連した物性分野の基礎研究と応用研究の分野から招待された著名な研究者が、欧州、アメリカ、アジアから集まり議論する場であり、一部では、物性物理のヤルタ会議とも呼ばれています。 丁度、学会がおわり、新学期が本格的にスタートするころで忙しい時期ではありますが、日本からも今回6名の研究者が招待されました。 黒海に突き出たクリミア半島の先端に位置するヤルタは、モスクワと比べると温暖なこともあり、ヨーロッパの保養地として知られています。 とはいえ、さすがに緯度が高く、9月末とはいえ、涼しいを通り越して寒いくらいで、日本でいうと11月末くらいの気候でした。 また、このクリミア半島は、トルコやギリシャとも近く、旧ソ連でありながら独特の文化をもっています。写真は、そのヤルタの街の風景です。 第二次大戦後のヤルタ会談が有名ですが、市内には、いくつかの宮殿が残っており英国のチャーチル首相の当時の宿舎にもなった宮殿には会議の中日に参加者全員でマイクロバスで出かけました。 Sergei先生と奥さんのIrynaさんに街を案内して頂き、歴史のあるヤルタの雰囲気を感じることができました。 ウクライナは旧ソ連の中でも、西欧に近いこともありアメリカやヨーロッパ系の企業や銀行が沢山進出しています。レーニンの銅像の正面に、マクドナルドがたっている広場で時代の変化を感じました。
中澤は今回、Sergei先生の紹介でワークショップの方に参加させて頂き第二日に“Thermodynamic Properties of Liquid-Like Spin States in Dimer-Mott Organic Compounds”というタイトルの講演を行いました。理論物理の研究者や、Metal-Insulator転移を研究している方とも実りの多い議論をさせて頂きました。残念ながら後半のコンファレンスは講義があり、戻ってきましたが、分子性の化合物の電気伝導に関する様々な問題を、分子レベルでも実験的に捉えていく必要性を強く感じました。
ホテルヤルタからみたヤルタの町並み。左側には黒海が広がっている。