研究内容

研究内容

独自の機能分子を設計・合成・材料化し,物質中における機能分子の動きや集合を制御することで,光・電子・力学的な物性を操る。有機分子の開発を基軸に据えつつ,自然科学の理解を深める分子システムや,科学技術を前進させる有機材料の創出を目指す。研究の出口を幅広く捉え,基礎科学と応用技術を両輪として,次世代の科学技術を担う人材を育成する。最近の研究テーマの例を以下に示す。

柔軟な分子の動きを活かした機能分子の合成

柔軟な発光分子を高分子・液晶・流体などに分散させ,巨視的な物質の変形に伴って起こる分子骨格の動きを発光スペクトルや発光寿命の情報として取り出す。これにより,ナノスケールにおける物質の応力集中や流体の粘度分布など,物質中の環境変化をリアルタイムイメージングで追跡する。(齊藤)

環境応答する蛍光プローブと高分子材料開発

有機合成により,柔軟なπ共役構造をもつ「羽ばたく分子」(FLAP)を開発する。量子化学計算を利用しながら,基底状態および励起状態における分子の羽ばたき運動を解析し,動きに伴う電子構造や発光スペクトルの変化を明らかにする。(齊藤)

光照射で流動化する液晶やゲルの開発

集合しやすい機能分子を物質中で局所的に凝集させた材料を開発する。光照射,温度制御,電場印加などの刺激に対して機能分子が応答することで,かたさ・接着力・可溶性などを制御できる有機材料を開発する。また,データと計算を活用したマテリアルズインフォマティクスを並行して進める。(齊藤)

反芳香族化合物の系統的発光特性評価と希土類様発光色素の創製

金属錯体,特に希土類錯体は,多彩な発光特性(多重発光,可視~近赤外発光,フォトンアップコンバージョン発光)を示す一方で,一般的な有機化合物は,Kasha 則に則り最低励起状態からの発光のみが紫外可視光領域に観測される。我々は,単一の有機分子で希土類錯体に匹敵するような多様な発光特性の実現を目指している。実現のための鍵化合物として反芳香族化合物に着目している。特に,系統的な誘導体ライブラリの構築が可能な反芳香族ポルフィリノイドを用いて,反芳香族化合物の系統的な発光特性の評価を行い,通常の有機化合物とは全く異質な発光色素の創製を行っている。(山下)

ポルフィリノイドおよび金属錯体の機能化学

ポルフィリンおよびその金属錯体がもつ特異な電子状態および錯形成能を最大限利用した機能性分子の設計および評価を行っている。具体的には,分子包接能をもつポルフィリンホスト,近赤外吸収・発光色素,分子機械などの開発を行っている。(山下)

以上のように,有機合成,構造解析,量子化学計算,光吸収や発光の分光解析を日常的に行い,さらに,高分子や液晶の合成,熱物性や力学物性評価(かたさ測定や引張試験),顕微鏡イメージング,データ駆動化学などをテーマに応じて実施する。分子生成AI やソフトロボットなど,異分野の研究者との共同研究を積極的に進める。