ミュオン原子の形成機構の解明と,その応用


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ミュオン原子

ミュオン原子の模式図:
負の電荷をもったミュオンが原子核の周りに軌道を作っている。その軌道半径はとても小さく、そのはるか外側に電子の軌道があるため、化学的な性質はZ-1原子に近いと予想される

ミュオンとは?ミュオン原子とは?

ミュオンは素粒子のひとつで、地表ではてのひらに1秒間にーつ程度降ってきている。実験レべルでは大型の加速器施設(J-PARCやISIS等)で、人工的に大量に生成されている。

ミュオンは電子と同じ電荷を持っていて、電子の代わりに原子核の周りに軌道を作ることができる。この一風変わった原子は「ミュオン原子」と呼ばれる。

我々の研究室ではミュオン原子を化学種として、またミュオン原子の性質を利用した分析という世界的にもユ二ークな研究を進めている。

研究テーマ

N, O原子へのミュオン捕獲確率

単純に構成原子の数からすると
R(N/O)N2O = 2 × R(N/O)NOと予想されるが、ずれている

1. ミュオン原子の形成機構に関する研究

ミュオン原子の形成機構は複雑で、その詳細は未だに理解されていない。面白い現象として、同じミュオン原子が生成しても、その原子の置かれている状態(分子の形)で形成過程は大きく変わることが知られている。

我々は単純な分子を対象に、ミュオン原子の形成機構を観察することで、ミュオン原子形成の基礎研究を行っている。

ミュオン原子はZ-1原子とみなせる

ミュオンアルゴン原子は塩素原子であるとみなすことができる

2. ミュオン原子(擬似的なZ-1原子)による化学反応に向けた基礎研究

ミュオンは電子より200倍重い粒子なので、ミュオンの原子軌道はとても小さく、電子からすると中心の電荷がZ-1に見える。つまりミュオン原子の原子番号はZ-1であるとみなすことができる。実際に、ミュオン原子のエックス線のエネルギーはZ-1原子に近いことがわかっている(ただし完全なZ-1からも少しずれている)。

我々はこのことを利用し、ミュオンアルゴン原子(疑似的な塩素原子)とメタンとのラジカル反応などを観測することを目標に基礎研究を行っている。

ミュオン特性X線スペクトル

3. ミュオン原子を用いた三次元非破壊元素分析法の開発

ミュオン原子ができると、ミュオン原子からはミュオン特性X線が放出される。ミュオンは電子の200倍重い粒子なので、X線エネルギーも200倍高いものとなリとても透過力が強い。

この透過力の強いX線を手リ用すると、物質の内部についても蛍光X線分析ができる。我々はミュオン原子を用いた、ユ二ークで新しい元素分析法の開発に挑戦している。


新πAX実験: 過去の実験の紹介ページです。現在はKEK-PSではなく、茨城県のJ-PARCで実験を行っています。


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