理学部化学科では、主に３年生を対象とした「コロキウム講演会」を行っています。院生・教員など、他の方のご参加も大いに歓迎しております。 講演者の先生方には、最先端の研究などについて専門分野以外の方にも理解できるよう易しく解説していただきます。また３月には卒業記念講演会を行いますので、学部卒業/大学院修了の学生各位は是非ご参加下さい。

坂本 雅典 先生

（大阪大学 産業科学研究所 金属有機融合材料研究分野 教授）

重元素の合成と化学的・核的研究

２０２５年３月１４日（火）１５時１０分から, D５０１大講義室

人類、動植物など地球上に生きる生命の全てが太陽から降り注ぐエネルギーの恩恵を受けている。しかしながら、太陽光のうち赤外域の光を捕集し、有用なエネルギーに変換することは 12 億年以上の光利用の歴史をもつ植物でさえ成し遂げていない難題である。赤外域の太陽光を電力や化学エネルギーなど人類の役に立つエネルギーに変換する技術が実現すれば、未利用再生可能エネルギーである赤外光のエネルギー資源化につながる。講演者は、赤外光を吸収する局在表面プラズモン共鳴（LSPR）を示すヘビードープ半導体ナノ粒子を利用する事により、現在までに報告されている赤外応答光触媒を上回る効率で熱線を化学エネルギーに変換することに成功した[波長 1100 nm において変換効率 3.8％を実現]。さらには、地表に届く長波長限界（2000～2500 nm）領域の太陽光のエネルギー変換を世界で初めて実現した。また、太陽光程度の光で可視光相当の電位を生み出す新たなエネルギーアップコンバージョン機構の開発に成功している。赤外線をエネルギーに変換する事には、太陽光のエネルギー利用の高効率化以外にも利点がある。赤外線を選択的に吸収し、可視光を透過する赤外捕集材は人間の目には無色透明に見える。講演者は、赤 外線を選択的に吸収する赤外捕集材を活性層として用いる事で窓ガラスのような無色透明の太陽電池の開発が可能であることを世界で初めて実証した。