本年4月より国立大学は法人化された.学内外で様々な“変革”が模索され, われわれを取り巻く状況は目まぐるしく変わっている.そんな中で大学での研究はどうあるべきか, そもそも理学とは何か,基礎研究とは何か,研究を通し大学で行う教育はどうあるべきか, 研究・教育の独自性や個性などが厳しく問われている.
分子熱力学研究センターとして5年が経過した.初代の化学熱学実験施設, 二代目のミクロ熱研究センターを含めれば四半世紀を歩んできたわけである. たまたま一昨年から人事の交替期にさしかかり,ある意味で最も苦しい時期である. しかし同時に,将来を展望する絶好の機会でもある.些末な雑事に紛れてしまうことなく, 伝統を生かした研究,良き伝統が生きる研究を是非目指したいものである.
教 授 | 稲葉 章 | 分子熱力学研究センター (センター長) |
教 授 | 足立桂一郎 | 高分子科学専攻:高分子構造・物性・機能論講座 |
教 授 | 笠井俊夫 | 化学専攻:物理化学講座 |
教 授 | 中筋一弘 | 化学専攻:有機化学講座 |
教 授 | 山口 兆 | 化学専攻:物理化学講座 |
教 授 | 渡會 仁 | 化学専攻:無機化学講座 |
センター長(兼) 教 授 |
稲葉 章 | inaba(注) |
講 師 | 長野八久 | nagano |
講 師 | 高倉洋礼 | takakura |
助 手 | 宮崎裕司 | miyazaki |
助 手 | 崎里直己 | sakisato |
外国人客員研究員 | Ove Andersson | |
事務員(兼) | 細川裕子 | yhoso |
第8回レーンビッツセミナーが6月にロストックで開催され, 稲葉が招待講演 “Structure and Phase Transition of Molecular Monolayers Adsorbed on Solid Surfaces” を行った.ゴードン会議のスタイルを踏襲したもので, 密度の非常に濃い議論を交わすことができた. 第59回カロリメトリー会議(CALCON-2004)が6月末にサンタフェで開催され, 稲葉が講演発表を行った.また,松尾隆祐名誉教授が講演発表された. 8月には第18回IUPAC化学熱力学国際会議(ICCT-2004)が北京で開催され, 稲葉と宮崎助手が講演発表を行った.また,徂徠道夫名誉教授が全体講演“Entropy Diagnosis for Phase Transitions Occurring in Functional Materials”を行われた. 9月にはイタリアのキアラグナで第13回熱分析熱測定国際会議(ICTAC)が開催され, 長野講師が講演発表を行った.菅宏名誉教授はSetaram-ICTAC賞を受賞し, 記念講演“Calorimetric Study of Transition Phenomena in Molecular Solids”を行われた. 10月には筑波で分子磁性体国際会議(ICMM-2004)が開催され, 宮崎助手と大学院生の池内君および徂徠名誉教授が講演発表を行った. 国内学会では,例年通り熱測定討論会(今年は東京)で多数の発表を行った. また,国内の諸学会で研究発表を行った. 以上の講演発表の詳細は,リストの形で本号に掲載しているので参照していただきたい.
8月5日にセンター主催のセミナー講演会を開催した.今回は長野講師,高倉講師に加え, 一昨年までセンターの一員であった現東京工業大学理工学研究科化学専攻助教授の中澤康浩氏を迎え講演して いただいた. 題目は以下の通りである.
今年度は幸運にも新規に,基盤研究(A)「界面特異な新奇凝縮相における秩序と乱れ」 (研究代表者,稲葉)が採択された.2006年度までの3年間の研究プロジェクトがスタートしたわけである. 対象は3つに及び, 1) 気固界面で作成した種々の分子性2次元固体について相挙動と構造・ダイナミクスを明らかにする. 2) 固液界面で2次元固体を作成し,同様の研究を行う. 3) バルク結晶の核生成と成長において界面が如何に重要な役目をしているかを, とりわけ成長の初期過程に注目し構造熱力学的な研究によって探る. いずれの系においても興味の中心は「秩序と乱れの拮抗」にあり, バルク系から表面・界面系に目を向け新奇凝縮相を捉え, 構造と熱力学の両側面からその実体を明らかにしようという試みである.
宮崎助手を研究代表者とする基盤研究(C) 「ナノスケール磁性体の磁気的性質に関する熱力学的研究」は2005年度まで継続中である.
教育活動として各人はそれぞれ講義・セミナー・学生実験などを担当している. 教員が入れ替わる時期であり,カリキュラムの移行期でもあることから各人の負担が増してきている. 以下に今年度の担当を列挙しておく.
基礎セミナー(化学フロンティア):稲葉,高倉,宮崎,崎里/化学概論:長野/平和の探求:長野/化学入門セミナー1:長野/一括教育(化学実験):宮崎
基礎セミナー(現代科学の課題):長野/化学入門セミナー2:高倉/共通教育化学実験(無機化学):崎里
化学熱力学1:稲葉
化学熱力学2:稲葉/統計力学概論(再履修分):稲葉/分子構造論1:長野/基礎化学実験:長野
分子構造論1:長野/化学実験2:長野,高倉,宮崎,崎里
物性化学:高倉
凝縮系物理化学:稲葉
この一年間に2名の修士(理学)が誕生した.
日本熱測定学会が主催する2006年の熱測定討論会は, 日本熱物性学会が主催する熱物性シンポジウムとのジョイントで開催することが決まり, 熱測定学会側の世話役を稲葉が務めることになった. 500名を越える参加者が見込まれ大規模な討論会となる. 会期と会場(大阪もしくは京都)を検討しているところである. この他,学会関連で以下の活動を行っている.
氏名 | 目的国 | 目的 | 期間 |
稲葉 章(教授) | ドイツ | 第8回レーンビッツセミナーに出席(ロストック) | 2004.6.6 - 2004.6.12 |
稲葉 章(教授) | 米国 | 第59回カロリメトリー会議に出席(サンタフェ) | 2004.6.27 - 2004.7.3 |
稲葉 章(教授) | 中国 | 第18回IUPAC化学熱力学国際会議に出席(北京) | 2004.8.16 - 2004.8.22 |
宮崎裕司(助手) | 中国 | 第18回IUPAC化学熱力学国際会議に出席(北京) | 2004.8.16 - 2004.8.22 |
長野八久(講師) | イタリア | 第13回ICTAC国際会議に出席(キアラグナ) | 2004.9.11 - 2004.9.19 |
来訪者(Visitor) | 所属(Affiliation) | 訪問期間(Visiting days) |
Prof. Joel S. Miller | Department of Chemistry, University of Utah, USA | February 7, 2004 |
Prof. Naseem Rahman | Faculty of Science, University of Trieste, ITALY | June 23-September 10, 2004 |
Dr. Ove Andersson | Department of Physics, Umeå University, SWEDEN | September 13, 2004- |
Prof. Paul M. Lahti | Department of Chemistry, University of Massachusetts, USA | October 20, 2004 |