今年の熱測定討論会は,第27回日本熱物性シンポジウムとのジョイントミーティングとして10月7日(土)から9日(月・祝)までの3日間,京都大学の吉田本部キャンパスで開催された. 討論会の公式報告は熱測定 Vol. 33 (No. 5) に掲載されているが,実行委員長を務めさせていただいた関係で,印象を含め少しばかり苦労話を吐露させていただきたい.
参加者総数は2学会あわせ500名を越えた.全体を把握するには,ほぼ限界といえる規模かもしれない. 熱測定討論会として6件の特別講演を用意したが,間際になって受賞講演が4件(うち1件は特別講演と重複)設定されたため,プログラム編成に苦慮する場面もあった. ところで,このジョイントミーティングは5年に一度開催されることになっている. どちらも「熱」を扱う学会が主催しているが,両学会では歴史と文化がかなり違う. 熱測定討論会および熱測定学会は,いずれも関集三名誉教授が始められたもので,その成り立ちが理学色の強いものであったためだろうか,今でもそう感じる人が多い. しかし今回,ジョイントを通していろいろ勉強させてもらったのは思いがけない収穫であった.
実行委員には阪大工学研究科や近畿大学,京都工芸繊維大学,東レリサーチセンターからも加わっていただき,当センターと物性物理化学研究室からは学生共々,全員出動となった. 世の中はマニュアル時代である.そこで,前日の準備作業用に「準備マニュアル」,当日用に「運営マニュアル」を作成した. 実行委員(9名)とアルバイト学生(16名),事務局(1名)がこれに従い作業を行った. 一方で,マニュアルにない事項については各自が知恵を働かせ,臨機応変に対処してくれるよう呉々もお願いした. これが何とかワークするのも,この程度の規模が限度かもしれない. 細かいミスやトラブルはあったものの,大きな事故もなく,大きな赤字を出すこともなく討論会を運営できたのは非常に幸運であった. 協力していただいた方々に感謝したい.
討論会のイベントの一つとして,会期中に学会編の新刊書「山頂はなぜ涼しいか 熱・エネルギーの科学」を販売した. 編集委員には名誉教授の徂徠先生や松尾先生が加わり,稲葉も執筆を分担させていただいた. 高校生を含む一般向けの啓蒙書である.その後も売れ行きはなかなか良いようである. 学会も見えるかたちの社会貢献が要求される時代である. 社会との繋がりという点では,今回の討論会では幸運にも「関西エネルギー・リサイクル科学研究振興財団」から学会開催助成を受けることができた. 外国人招待者(カナダ,フランス,チェコ,中国の4名)の旅費や滞在費,謝金の一部を賄うには,この種の助成金が不可欠であり,非常に有難いものであった.
討論会の宣伝ポスターは,崎里氏に作成をお願いした. ホームページを利用した迅速な情報伝達も最大限に努めた. 一部ではあるが,強い要望があったので英語版ホームページも作成した. グローバル化と言われる時代の要請であろうか,なかなか厳しい. しばらくホームページ(http://www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/micro/netsu42/index.html)を残しておくので見ていただきたい. われわれ自身が見ると,もはや懐かしい思い出ではある.
討論会の宣伝ポスター
討論会場にて.左から,特別講演者の Prof. Zhiwu Yu (Tsinghua Univ., China) および Prof. Jaroslav Šesták (Academy of Science, Czech Republic) ,筆者,田中春彦先生(広島大学名誉教授).
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