研究室で過ごした日々

崎里直己

私は,入学した当時からずっと大阪大学にいましたので,学生時代,松尾研所属の時期も含めると,阪大理学部のいわゆる「熱測定の研究室」に計12年間在籍していたことになります. そのうちの最後の約4年間,助手あるいはポスドクとして分子熱力学研究センターに在籍し,研究活動に携わりました.

研究室で過ごした日々の思い出は色々あります. 断熱型熱量計による熱容量測定と,非常に高い精度で得られるその熱容量データから興味深いことが見出されたときの面白さ. より詳細なデータを得るための徹夜での測定. 高エネ研や原研への中性子散乱の出張実験と出張先での飲食店めぐり. 試行錯誤の連続でなかなかうまくいかなかった中性子準弾性散乱の解析. 結局極めることの出来なかったMDシミュレーション. 興味深い論文を見つけて読むことは面白い一方で,定まった時間内に簡潔にまとめて他人に説明するのは最後まで難しいと感じていた雑誌会(いつも時間オーバー気味でした). ああでもない,こうでもないとなかなか進まないながらも,改めて勉強になることも多く,楽しくもあった輪読. わずか1期でしたが,貴重な経験となった学生実験の指導. 何度も経験しましたが,最後まで満足に行えたとは思えなかった基礎セミナー担当週での指導,などなど・・・. いずれも忘れ得ないものばかりです. しかしながら,やはり今の自分にとっては,在籍中に多くの方から頂いたご指導,叱咤激励に対して,最終的にお応えすることが出来なかったということが,心残りとしていつまでも残り続けています. ここで改めて,これまでに頂いた多くのご指導に対して御礼申し上げますとともに,お応え出来なかったことについてお詫び申し上げます.

私は本年4月より,ゴムや発泡ウレタンの硬度を測定する機器を開発,製造しているメーカーで働いています. 現在は,主としてそれらの機器のためのソフトウェアを作成する仕事に従事しています. 今のところは,これまでの研究生活で得た知識や経験の中で,現在の仕事上で活かせているのは,C, C++を始めとするプログラミング言語でデータ解析のソフトウェアを作成してきた経験と,わずかばかりの英語の読み書きに対する慣れ程度ですが,いずれは,サイエンスに関する知識や経験についても,少しでも活かせる形にしていきたいと考えています.

最後になりましたが,今後の分子熱力学研究センターのますますのご発展をお祈りいたします.

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