ポーランドのクラクフから車で3時間,スロバキア国境に近い山岳保養地ザコパネのホテル「SOSNICA」において,7月15日(日)から20日(金)の日程で会は開催された. その名が示す通り,Jerzy Janik教授(クラクフ核物理研究所)の友人研究者が中心となって2〜3年毎に集まっている. 副題「Neutron Scattering Spectroscopy and Related Problems」が示すように,中性子散乱研究を主としてきたグループである. 今年は,教授が80歳を迎えたお祝いの年でもあった. 42名の招待者を含む参加者63名のうち日本人は2人であった. もう一人は齋藤一弥筑波大学教授(2004年3月までセンターに在籍)である. 2001年には,元センター長の徂徠道夫名誉教授が参加されている(本レポート 2001年 (No. 22)). センターとクラクフ核物理研究所の交流関係は長く,のべ10人の研究者がこれまでにセンターに滞在し共同研究をしてきた.
会の印象は,1990年に初めてゴードン会議に招待されたときに近いものがあった. 1時間の講演が午前中に何件か設定されているだけで,昼食後は自由に討論(もしくはハイキングや散策など)を楽しみ,夕食後には専門外の講演が催された. 私は「Structural Thermodynamic Approach to the Investigation of Condensed Matter」と題して講演した. Werner Press教授やMichael Prager博士,Ireneusz Natkaniec博士など旧知の研究者の最近の研究内容が聴けたこと,センター滞在経験のあるTadeusz Wasiutyński教授やMaria Massalska-Arodź教授,Henryk Arodź教授,Jan Krawczyk博士,Jacek Ściesińskiさん,Wolfgang Haase教授に再会できたのは大変うれしいことであった.
「山岳地なのでセーター持参のこと」との事前のアナウンスは見事に外れ,連日35 ℃を超える猛暑であった. ホテルに冷房設備はないが不思議と不快感はなく,毎朝8時30分から始まる会の冒頭でJanik教授が発する「Dear Friends」で一日が心地よく始まった. それにしても全講演の司会をした教授のエネルギーは凄い. 食事の席でたまたま教授と一緒になった折りに,「日本人はどうしてポーランド人にかくもsympatheticなのか」と話しかけられた. あれこれ議論した挙げ句「両国民のmentalityが似ているのでしょう」と応えたが,教授はまだ納得しないようであった. 何かの調査で,21世紀に発展する国や注目される国民性という点で,ポーランドが挙げられていたのだが詳細を今でも思い出せないでいる. 機会があればもっと議論してみたいところである.
いろいろな思い出を残してくれた会であるが,11月12日に研究所のWojciech Zajac博士からのメールで,Waclaw Witko博士(オープニングの写真の右最前列の紳士)が急死したとの訃報が入った. スロバキアへのエクスカーションでも参加者を案内してくれ,公式のガイド免状をもつ日本びいきの博士であった. ご冥福を祈りたい.
オープニングで挨拶するJanik教授.
初日の夕食会.