分子熱力学研究センターは2009年3月をもって10年の時限を終了し,4月から構造熱科学研究センターとして改組され,新たなスタートを切った. 新しいセンターの立ち上げを機に,センターの構想や研究指針を紹介し,熱科学研究の最前線について議論する目的で,第1回の構造熱科学シンポジウムを7月25日(土)に大阪大学豊中キャンパス,理学研究科F棟608室においてセンター主催のもとに開催した. 「熱科学」を切り口とした盛り沢山な講演が,朝の9:30から夕方18:00まで続いた. 関西近辺だけでなく,関東からも多数の参加者があり,活発な議論がなされた.
最初に東島清理学研究科長から開催の挨拶と理学研究科における熱力学研究の重要性とセンターに対する期待が述べられ,次いで稲葉章センター長から新たにスタートした構造熱科学研究センターの概要と組織,研究の方向性が紹介された. 構造熱科学部門,熱計測科学部門,複雑系熱科学部門という3部門を研究の柱とし,従来から進めてきた国際共同研究をより広く展開し,熱科学の国際拠点として活動していくことが説明された.
その後,熱科学研究の分野でアクティブに活動している研究者とセンターの専任,兼任教員,運営委員あわせて13名による最新の研究成果の紹介が行われた. 午前中は液体,ガラス,界面,液晶などに関する構造熱科学的な研究,午前の最後と昼休みをはさんだ午後の前半は熱を切り口とした物性研究に関する講演であった. また,午後の後半は,複雑系・生体系に関する講演が続いた. 最後に阪大のOBでもある東工大の阿竹徹先生によって,「熱と温度の物理化学」というタイトルでご本人の研究の原点,熱的研究の魅力などについて最新のトッピクスを含めて講演を頂いた. 写真は,稲葉章センター長と日本熱測定学会の会長である吉田博久先生(首都大学東京)による講演の様子である.
多岐にわたる分野の研究ではあったが,熱,エントロピーを通した熱力学的な手法を通して,ミクロな構造や物質の機能の起源を議論するという点ではどの講演も共通性があり,分野を越えた議論が自然になされていることが印象的であった. 一日の講演を通して「構造熱科学」がどのようなものか十分に感じることができ,熱科学の分野の裾野の広さと研究対象の多様さを感じることができたシンポジウムであった.
講演終了後,大阪大学,豊中キャンパス内のレストラン「宙」で懇親会が行われた. 千原秀昭先生,菅宏先生,桃谷政順先生,徂徠道夫先生に挨拶と激励を頂いた. 来年は ICCT のポストコンファレンスとして8月に開催される予定である. なお,本シンポジウムは,大阪大学大学院グローバルCOE「生命環境化学グローバル教育研究拠点」の共催を得て行われた. サポート頂いたグローバルCOE関係の先生方,事務局の皆様に感謝したい.
ポスター
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