(4)教官の移動
教官の異動と人事交流は、教育・研究を活性化する上で重要な要素である。しかし、他大学・他機関からの教官招聘に強く依存することは、当該専攻から優れた人材が育成できていないことにも繋がるので、慎重な分析が必要である。以下では、当高分子科学専攻教官の出身大学、異動(退官、転出、内部昇格、転入)、年齢分布の変化を示し、そのような分析のための資料を提供する。
教授、助教授・講師、及び助手の出身大学をそれぞれ表1.7〜1.9にまとめる。ここでは、本学出身者(最終学歴)、本学出身であっても他機関や企業在籍経験者、他大学出身者かにより区別されている。平成5、6年度では、教授の60%が他大学出身であったのが、平成12年度には14%に減少している。この事実は、重点化(平成8年)前後に本学出身の助教授が教授に昇進したためであるが、当高分子学科あるいは高分子学専攻(旧名)の卒業生が育ってきたことによる。すなわち、高分子学科設立当時より他大学から教授を招聘してきたのが、この時期になって、理学部教育を受けた人材が育成され、むしろ他大学へ人材を送り出せるようになったためと考えられる。実際、重点化以前においても助教授・講師、助手は圧倒的に本学高分子学科卒業者が多い。これは、当学科が我が国の高分子科学の研究・教育に中心的役割を果たしてきたことの反映ととることが出来よう。ただし、上述のように、本学出身者の教官のみで専攻を形成するのは、教育・研究を活性化する上で決して好ましいことではない。今後、他大学出身者とのバランスがとれた組織へと徐々に改変することが当専攻の将来の更なる発展に重要と思われる。
表1.10に教官の異動を示す。平成8年度に見られる最大の異動は重点化によるが、この年を除いても、1年当たり平均4件の異動は、定員の20%に当たる。転出者6名のうち、5名が教授あるいは助教授・講師として栄転した。これら表1.7〜1.10のデータより、当専攻の教官分布は本学出身者が圧倒的に多いものの、人事異動は比較的活発であると言えよう。
図1.1に教官の年齢分布を示す。重点化を境に教授、助教授・講師、助手いずれの平均年齢も低下し、専攻が若返ったことが一目瞭然である。特に、助教授・講師のピークが50代であったのが、40代前半に移動している。このような若返りによる活性化は、重点化による効果の一つであったが、第2あるいは第3世代の教授の定年退官が重点化とたまたま重なったことにもよる。