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金属錯体とは?

写真水やアンモニアなどの無機物やアミノ酸などの有機物は非共有電子対を持つ原子部分で金属イオンに結合することができ、これらは配位子と呼ばれます。錯体とは、金属イオンとそれに結合した配位子の複合体を指し、金属の種類、配位子の種類によって、直線2配位構造、平面4配位構造、6配位8面体構造、8配位立方体構造など樣々な構造をとることが知られています。通常錯体は、電荷が中和された状態で結晶や粉末として得られます。具体例としては、[Ag(NH3]+)(ジアンミン銀(I)イオン)や[Fe(CN)6]4-(ヘキサシアノ鉄(II)イオン)があります。身近なところでは人間の血液の色の原因であるヘモグロビンが錯体の例で、この中にはヘムという有機物が鉄イオンと結合しています。不完全燃焼で一酸化炭素中毒になるのはヘモグロビンが酸素よりも一酸化炭素に結合しやすいために起こります。

遷移金属を含んだ錯体の特徴としては、綺麗で豊かな色彩を持つものが多いということが挙げられます。虹の7色を揃えることも可能です。これは物理化学とも関係してきますが、遷移金属に特徴的な電子が完全に詰まっていないd軌道を持っていることが関係しています。金属の電子軌道と配位子の軌道から分子軌道が出来た際に金属の電子状態が変化をし、金属のd軌道の電子が光のエネルギーを吸収することにより励起され、その励起された電子がエネルギーを失うときに発する光が主に可視領域(人が目に感じることのできる波長域)にあるためです。更に磁性を示す化合物が存在することも、金属錯体の特徴の1つです。この性質を生かして構造や結合の状態を調べることも可能です。

また、有機化合物のように幾何異性体や光学活性体も存在します。この現象は配位子の構造を換えることにより、更なる多樣性を持たせることが出来ます。幾何異性体については有機の教科書に出てくる概念に似ていますが、シス-トランス異性やメソ体-ラセミ体のほかに、8面体型の錯体に見ることが出来るmer-fac異性というものが存在します。更に、8面体型の錯体ではキレート環の幾何配置によってΔ-Λ、δ-λ(デルタ-ラムダ)配置(大文字と小文字で区別があります。)というものもあります。