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錯体分子技術による非クーロン力支配型イオン性固体(NCIS)の創製

写真 カチオン種とアニオン種から成るイオン性固体物質は自然界の至る所にあり、様々な機能性材料として利用されています。このようなイオン性固体においては、クーロン反発を避けるように、そしてクーロン引力を最大限に得るように、アニオン種とカチオン種が交互に、しかも密に配列するのが常識とされています。これは、クーロン力は非常に強く、その他の非クーロン相互作用の影響を大きく受けないためです。もし、クーロン力よりも非クーロン相互作用を大きくすることができれば、非クーロン相互作用が空間配列を支配する全く新しいタイプのイオン性固体が形成され、既存のイオン性固体では見られない未知の現象の発現が期待できます。

我々の研究グループでは、この新しいタイプのイオン性固体を「非クーロン支配型イオン性固体(NCIS)」と命名し、金属錯体をベースとする新技術(錯体分子技術)を用いて、その合成と機能開拓にチャレンジしています。

図に示したように、疎水性配位子と親水性配位子をあわせもつAuI4CoIII2六核錯体は、過塩素酸塩として結晶化する際、カチオン、アニオンが別々に集合した、「カチオン―アニオン分離集積構造」をもつイオン結晶を生成します。この化合物では、非クーロン力であるC-Hπ相互作用と水素結合が結晶構造形成に重要な役割を果たしており、NCISの典型例と言えます。
写真
AuI4CoIII2六核錯体の六量体(左)と過塩素酸イオンの十量体(右)

本研究は、(独)科学技術振興機構CRESTプロジェクト「新機能創出を目指した分子技術の構築」の一環として実施されています。 [リンク]