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水和カリウム超イオン伝導体の開発

写真 含硫アミノ酸の1種であるL-システインをもつ錯体配位子([Rh(L-cys)3]3-)に亜鉛イオンを反応させると、球状の外形をもつ錯体アニオン([Rh4Zn4(L-cys)12O]6-)が得られます。この錯体アニオンに対して、対カチオン種としてカリウムイオンを複合化させることにより、多数の結晶水を含んだイオン結晶が単離できます。
室温における結晶のイオン伝導率を測定したところ、0.01 M塩化カリウム水溶液に匹敵する、1.3×10-2 S/cmという極めて大きな値を示すことが判明しました。同時に、ナトリウムイオンやリチウムイオンを含む類似の結晶についても伝導率の調査を行ったところ、イオン伝導率が、Li+ < Na+ < K+の順で増加し、一般的なイオン伝導体と反対の傾向にあることも明らかにしました。各種実験から、カリウムイオンは水分子と配位した水和カリウムイオンという、より大きなイオンの状態で移動していることも示されました。これは、水和カリウムイオンが伝導種となる初めての超イオン伝導体です。

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写真 この研究の過程で、希土類イオンを含む溶液に超イオン伝導体結晶を浸すと、結晶格子内で、希土類イオン4個が水酸化物イオン4個が組み合わさった立方体型のクラスター(キュバンクラスター)を自発的に形成することが分かってきました。
この反応では、結晶そのものが配位子としてふるまっており「結晶配位子」というべき機能を持つといえます。現在、希土類イオン以外の金属イオンの結晶内集積反応に取り組んでいます。


プレスリリースもごらんください→溶液に浸すだけで結晶内に金属クラスターを形成