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錯体配位子で保護された金属硫化物クラスターの開発

写真金属酸化物や金属硫化物などの半導体材料をナノ粒子へと加工したものはナノクラスターや量子ドットと呼ばれ、特徴的な発光特性や溶媒可溶性を示すことから注目されています。当研究室では、3つの硫黄ドナー原子をもつ錯体配位子[Rh(aet)3]を銀イオンおよびD-ペニシラミンと混合し、穏やかに加熱すると、大きな硫化銀クラスターを14個の錯体配位子が取り囲んだ巨大クラスターが選択的に得られることを見出しました。
このクラスターは、全体で20+という大きな正電荷をもつことから、水に対する溶解度が極めて高いです。また、Dペニシラミンのキラリティの影響を受けて、錯体配位子の不斉バランスが崩れ、強い光学活性を示すこともわかりました。

写真上記の硫化銀ナノクラスターは、錯体配位子のロジウムイオンの影響によりほとんど発光を示しませんでした。最近、ロジウムイオンの代わりにイリジウムをもつ錯体配位子[Ir(aet)3]を用いてクラスター錯体を合成することにより、発光性を付与することに成功しています。このクラスターは、金イオンや銅イオンと部分的に交換する特性をもち、発光波長が大きく変化する面白い挙動を見出しています。