中国 CATS2008 に出席,
聊城大学・山東農業大学を訪問

第5回国際・第7回日中ジョイントシンポジウム (The 5th International and 7th China-Japan Joint Symposium on Calorimetry and Thermal Analysis & Exhibition, 通称 CATS2008) が2008年5月18日〜21日に中国大連にある中国科学院大連化学物理研究所の近くのホテル(星海假日酒店)で開催され,筆者はこれに参加する機会を得た. この会議は1986年から3年もしくは4年毎に日中交互に開催地を設定し開催されているもので,毎回のように国際色豊かになってきている. 今回は黄海に面するリゾートホテルが会場となった. 合計14ヶ国から201名の参加があり,日本からの参加者は39名であった. 冒頭の開会時に筆者は日本熱測定学会会長として挨拶する機会があり,直前の5月12日に発生した四川省の大地震に言及し,その犠牲者ならびに被害者に対し哀悼の意を表した. 1995年に経験した阪神・淡路大震災を思い出したものであった.

センターの関係では,兼任教員の中澤康浩教授と筆者が plenary lecture を行った. 講演題目はそれぞれ,「Electron Correlations in the Quasi-One-Dimensional System of (DI-DCNQI)2Ag」,「Phase Transitions Induced by Methyl Partial Deuteration in Some Molecular Solids: Orientational Ordering and Rotational Tunneling of Methyl Groups」であった. 会議の合間に元センター客員教授の譚志誠教授を大連化学物理研究所に訪ね,研究室を見学させていただいた. センターに現在滞在中の藍孝征博士も同行したが,彼は譚教授の下で学位を取得した一人である(写真1参照).

筆者が中国を訪ねたのはこれが3度目であったが,言葉と勝手がわからないため,これまであまり観光らしいことをしなかった. しかも,いずれも北京の滞在であった. 今回は,藍博士に色々なところを案内していただいた. 国際会議終了後まずは,山東省の聊城大学の邸友瑩(You-Ying Di)教授を訪ねた. 郊外にあるこの大学は広大な敷地をもち,近代化・国際化を目指す新興大学という印象であった. 邸教授もまた譚教授の下で学位を取得した一人で,今は譚教授らが開発した液体窒素温度以上で作動する断熱型熱量計を使って研究を行っている. 今回の招聘目的は,聊城大学の客員教授として講義をすることであった(写真2参照). 講演題目は「How Can Experimental Thermodynamics Contribute to Molecular Science?」であった. 英語での講義であり学生がどこまで理解したかは不明だが,とにかく質問が多く,講義中に寝たり退出したりする学生が皆無で,その熱意が伝わってきた.

次に,同じ山東省にある藍博士の勤務先の山東農業大学を訪ね,やはり講演する機会を得た. ここでの講演題目は「Molecular Science and Thermodynamics at the Research Center for Molecular Thermodynamics」であった. 大阪大学での藍博士の活躍ぶりも含め,センターの研究活動を紹介した. この大学は聊城大学と異なり都会の喧噪の中にあって,しかも学内全寮制であるためか学生で一日中混雑しているという感じであった. 学生が活気に溢れているという点で現在の中国の一面を見た気がした. また,中国で農業大学のランクが一般に高いことを肌で感じた.

ちょうど一週間の中国滞在であったが,藍博士には合間に泰山や曲阜の三孔(孔府,孔廟,孔林)なども案内していただいた. オリンピック開催直前ということもあり,北京空港を代表とする最新設備を見る一方で,地方における一般の生活ぶりは何十年か前の日本を思わせるものであった. しかし,妙に親近感を覚えるのはやはり漢字文化のせいであろうか. それとも悠久の歴史の流れだろうか. いずれにしても思い出に残る一週間であった.

(稲葉 章)

Picture 1 写真1:大連のCATS2008会場にて(左から3人目は譚志誠教授,4人目は筆者,5人目は中澤康浩教授,右端は藍孝征博士,それ以外は譚教授の学生達)

Picture 2 写真2:聊城大学の講義室にて,学部長から客員教授証を受けたところ

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