第63回カロリメトリー会議報告

The 63rd Calorimetry Conference (CALCON 2008) が7月2日〜7月6日の会期でニュージャージー州 Jersey City の Hyatt Regency ホテルで行われました. 組織委員長は NIST の Robert D. Chirico 博士で,記念講演およびポスター発表を含めて101件の発表がありました. 参加者は約110名でした. 当センターからは稲葉教授と鈴木が参加し,口頭発表とポスター発表を各1件行いました. 昨年の本会議は日本熱測定学会との共同開催であったことやハワイで開催されたという地理的な要因もあり,日本からの参加者が半数を超えるという状況でしたが,今年の会議は日本からの参加者は9名にとどまりました. むしろ,東海岸で開催されたためか,ヨーロッパからの参加者が目立っていたように思います.

CALCON では毎年,熱測定の分野で活躍する研究者に複数の賞が贈られます. 今年も当センターと関わりの深い研究者に幾つかの賞が贈られました. 優れた熱測定技法開発を行った研究者に贈られる Christensen 賞は2005年にセンターに客員教授として滞在された Christoph Schick 教授(Rostock大学)が受賞し,40歳以下の優れた若手研究者に贈られる Sunner 賞は1998年までセンターに在籍された山村泰久博士(筑波大学)が受賞しました. また,学生に贈られる Giauque 賞を,複数の受賞者の1人として光栄にも鈴木がいただきました

本会議は例年通り受賞講演,全体講演,一般講演(招待講演を含む口頭発表とポスター発表)から構成され,一般講演は Solution & Fluid Mixtures, Biothermodynamics, Thermodynamic Databases, Industrial Applications, Materials & Nanotechnology, Macromolecules, Pharmaceutical Products という多彩な内容の7部門に分かれて行われました. Industrial Applications 部門と Macromolecules 部門では,最近亡くなられた Thomas C. Hofelich 博士および Ann Gisburg 博士の長年に亘る本会議への貢献を称え,追悼する講演も行われました. 3日目の夕方に行われた Banquet では,生物熱測定分野で先駆的な研究を行い,生物熱力学の進歩に大きく貢献した Peter L. Privalov 教授(Michigan大学)の偉業を称えるスピーチが行われました. 本人も元気な姿でこれに応えていました. 会議全体を通して “memorial” な企画が多かった印象があります.

個人的には,2年前に Lähnwitz セミナーでお世話になった Schick 教授と再会できたことが大変うれしいことでした. 同教授とは,科学的な議論のみならず,ドイツとの日本の教育システムの違いなど広い話題で議論ができました.

会期中に開催された Business Meeting では,任期切れにともなう Director の選挙が行われ,日本からは齋藤一弥教授(筑波大学)が再選出されました. また,次回のカロリメトリー会議は Michael T. Henzl 教授(Missouri大学)を Program Chair として来年6月にニューメキシコ州 Santa Fe で行われることが確認されました.

(鈴木 晴)

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