毎年，大阪大学では全学の投稿論文の中から優秀な100編の論文を選んで， “Annual Report of Osaka University: Academic Achievement” の中で紹介している． 今回，私共が投稿した論文 “Spin Crossover Phenomenon Accompanying Order-Disorder Phase Transition in the Ligand of [FeII(DAPP)(abpt)] (ClO4)2 Compound (DAPP = Bis(3-aminopropyl)(2-pyridylmethyl)amine, abpt = 4-Amino-3,5-bis(pyridin-2-yl)-1,2,4-triazole) and Its Successive Self-Grinding Effect”, Y. Miyazaki, T. Nakamoto, S. Ikeuchi, K. Saito, A. Inaba, M. Sorai, T. Tojo, T. Atake, G. S. Matouzenko, S. Zein, and S. A. Borshch, J. Phys. Chem. B 111, 12508–12517 (2007) を応募したところ，名誉なことに “Annual Report of Osaka University: Academic Achievement 2007–2008” の論文100選に選ばれた (http://www.osaka-u.ac.jp/en/research/annual-report/volume-9/100_select_paper/science01.html) ． この論文は，配位子の秩序−無秩序相転移を伴うスピンクロスオーバー現象を示す最初のスピンクロスオーバー錯体である [FeII(DAPP)(abpt)] (ClO4)2 錯体の熱力学的研究について述べたもので，フランスの Matouzenko 博士と Borshch 博士ご夫妻らとの共同研究である． とても興味深いことに，この錯体はスピンクロスオーバー相転移を経験する度に結晶が自己粉砕していき，それに伴って相転移による熱容量等のシグナルがブロードになるという挙動が観測された非常に珍しい物質である． 詳しくは上記論文をご覧いただきたい． このように，私共の研究が評価されたことは大変喜ばしいことであり，今後研究を続けていく上で大いに励みとなるものである．
