齋藤一弥教授が2012年度
日本熱測定学会学会賞を受賞

1995年から2004年まで当センターの専任助教授として所属され,2004年以降は筑波大学数理物質科学研究科教授としてご活躍の齋藤一弥先生が,大変栄誉なことに今年度の日本熱測定学会学会賞を受賞されました.受賞理由は「分子構造に注目した液晶の分子熱力学の展開」に対するもので,8月22〜24日に近畿大学で行われた第48回熱測定討論会(ICTAC15 との共催)で授与式と受賞講演(24日)が行われました.ここに,謹んでお祝いとお慶びを申し上げます.

齋藤先生は大阪大学理学部化学科の千原秀昭先生の研究室のご出身で,故阿竹徹先生の直接のご指導の下,断熱型熱量計によるビフェニルなどの有機化合物の熱物性研究を行われ,学位取得後,東京都立大学(現首都大学東京)で池本勲先生の研究室の助手として有機伝導体の電気物性研究に携わられました.その頃から先生独自に断熱型熱量計を製作されて熱物性研究を再開され,私共の研究センターに赴任されてからも,交流型熱量計の製作など新しい装置開発を含め,精力的に研究を進められました.その頃,長年液晶研究に取り組んでおられた当時センター長の徂徠道夫先生と共同で,非常に珍しいサーモトロピック液晶の一種であるキュービック液晶の熱力学的研究を始められ,その当時謎であったキュービック液晶相の出現機構とそのアルキル側鎖の融解挙動との関係を,エントロピーの側面から実に見事に解明されました.特に,キュービック液晶相の前後に現れるスメクティックC相への転移エントロピーとその出現順序を,数学上の三重周期極小曲面とのアナロジーやコア・アルキル側鎖のエントロピー変化とアルキル側鎖長依存性から説明できることを示されたことに対して,当時私も大いに感銘を受けたことを覚えております.

齋藤先生は,筑波大学に移られても引き続き液晶研究に熱心に取り組まれ,今回の受賞につながる成果を上げてこられました.さらに,先生はサーモトロピック液晶とリオトロピック液晶を統一的に理解するという描像に向けて研究を進めておられるようです.先生の益々のご活躍をお祈りする次第であります.

(宮崎裕司)


Prof. Kazuya Saito

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