研究室で過ごした日々

鈴木 晴 博士

(2005年4月1日〜2012年3月31日滞在)

鈴木晴君は,化学科の研究室配属によって理学部4年生から分子熱力学研究センターの一員となり,2009年の改組で構造熱科学研究センターとなってからは最初の博士学位取得者である(2011年3月).その後1年間は学振特別研究員としてセンターに滞在したが,通算7年間にわたって研究室の戦力として大きな役割を果たした.4月に理化学研究所に採用となり,10月からは新たに基礎科学特別研究員として採用され,新しい分野での活躍が期待されている.大学院生時代の研究を多かれ少なかれ継続する人が多い昨今,敢えて異なる分野に挑戦しようという彼にエールを送りたいと思う.

ゴルスカ(Natalia Górska)博士

(2010年1月14日〜2012年4月2日滞在)

ゴルスカ博士は,ポーランドのヤゲロニアン大学出身であり,当時の指導教員Edward Mikuli教授は,Jerzy Janik教授の弟子の一人である.彼女はPhD取得後3年間,ミシガン大学に博士研究員として在籍し,その後,当センターに特任研究員として赴任したのである.いろいろな面で物怖じせず,果敢に挑戦する勇気を持ち合わせた好人物という印象である.滞在中に執筆論文5報を済ませ,帰国してからも継続して執筆中である.10月から,ヤゲロニアン大学でパーマネントポジションに就いたという嬉しい便りをもらったところである.アカデミックポジションを得るのが世界的に困難な時代に,単に幸運なだけでなく実績が認められたものとして,喜びを分かち合いたいと思う.

ヴァシュティンスキー(Tadeusz Wasiutyński)教授

(2012年1月12日〜4月12日滞在)

Jerzy Janik教授の一番弟子であるヴァシュティンスキー教授は,クラクフ核物理研究所に在籍し,定年を迎えた昨年から雑用が激減したため今後は研究に専念できるとのことで,2度目の滞在となった.前回はちょうど10年前で,やはり3ヶ月間の滞在であった.分子磁性体の研究を行っているが,これまでの磁気測定に加えて,ミューオンを利用した SR測定が容易に行えるようになったため,構造研究や精密熱測定と併せて,磁気相転移に関して様々な議論が可能となった.彼の共同研究者であるPiotr Zielinski博士は現在センターに滞在中であり,PhD学生のPiotr Konieczny君も1ヶ月という短期間であるが,センターに武者修行に来ている.継続して成果を上げて欲しいものである.

藍孝征(Lan, Xiaozheng)教授

(2012年2月13日〜2月16日,2012年7月31日〜8月29日滞在)

山東農業大学の藍教授は,2007年から2年間,当センターの特任研究員を務めた経緯がある.帰国後もしばらく,大学では経済的に恵まれなかったようだが,昨年から研究費が当たり出したとのことで意気盛んである.聞くところによれば,中国版の科研費では,採否を決定する教授が個別に公開されるため,その後も両者の間に微妙な関係が続くようである.あまりよいシステムと思えず,その弊害が恐らく顕在化するものと思うが,当面はコミュニティの形成に役立っているようである.2月の滞在は,ミクロボンベ熱量計の設計に関する相談のために共同研究者や技術者と来日したもので,夏の滞在は,国際会議(ICTAC)での研究発表と文献調査が主な目的であった.いろいろな機会を利用してアイデアを仕入れ,自らの研究に生かしているようで頼もしい限りである.

(稲葉 章)

いただいた手紙を再掲します.

『ゴルスカ博士からの手紙』 『ヴァシュティンスキー教授からの手紙』
『藍孝征博士からの手紙』 『鈴木 晴 博士からの手紙』

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