研究室で過ごした日々

ピオトール・ジーリンスキー(Piotr M. Zieliński)博士

(2012年6月29日〜2013年3月28日滞在)

ポーランド・クラクフにある核物理研究所のピオトール・ジーリンスキー博士は,2008年に外国人研究員として当センター(当時は分子熱力学研究センター)に来られて以来,2度目の来日です.今回は,奥様のマグダさんとお子様のスタシャ君のご家族3人で来られました. 前回と比べて,9ヶ月間という比較的長い滞在期間だったので,研究室既設の緩和型熱量計 PPMS を用いて,集積型金属錯体である [MII(pyrazole)4]2 [NbIV(CN)8]·4H2O (M = Fe2+, Co2+)や {[CuII(5,5'-dmbpy)] [CuII(5,5'-dmbpy)X] [WV(CN)8] ·H2O (X = Cl-, Br-, NO3-) ばかりでなく, 東京大学の大越慎一教授の研究室に客員研究員として留学中のポーランド・ヤゲロニアン大学博士課程学生のシモン·ホーラジー君との共同研究で,一次元性錯体 {[TbIII((RR)-iPr-pybox)(dmf)4]3 [WV(CN)8]3}·dmf·6H2O および二次元性錯体 [TbIII(Box)2(dmf)2][WV(CN)8]·H2O の磁場中での熱容量測定と,非常に多くの研究成果を上げられました. また,滞在期間中には,後述の当センターに短期滞在した同核物理研究所 PhD 学生のピオトール・コニエチュニー君と一緒に,測定結果について熱い議論を交わしました.帰国後は,これらの研究成果を論文にまとめるべく,大いに励んでおられることでしょう. 写真は歓迎会にご家族で参加されたときのものです.


Dr. Piotr M. Zieliński

ピオトール・コニエチュニー(Piotr M. Konieczny)君

(2012年11月5日〜2012年12月5日滞在)

前述のピオトール·ジーリンスキー博士と同じ,ポーランド·クラクフ核物理研究所の PhD 学生であるピオトール·コニエチュニー君は,いわゆる“武者修行”というようなかたちで,1ヶ月という短い期間当センターに短期滞在しました.滞在期間中は,ジーリンスキー博士と進めていた集積型金属錯体の熱容量測定に加わってもらいました.コニエチュニー君は積極的に実験に携わり,また,測定結果の解析方法について熱心に質問したり,議論に加わったりしていました.この短い期間に日本で経験した事柄が,後の彼の研究者としての人生に大いに役立つものであったと願いたいところです.写真は送別会での様子です.


Dr. Piotr M. Konieczny

古賀精方(Yoshikata Koga)博士

(2012年12月18日〜2013年2月19日滞在)

カナダのブリティッシュコロンビア大学の古賀精方博士は,水溶液を対象としてギブズエネルギーの3次微分量の直接測定による構造熱科学的研究に従事しておられます.今年もご夫妻で来日され,当センターの博士後期課程大学院生の吉田康君の実験指導を直接行っていただきました.今回は,水溶液のエントロピー的議論を行うため,新たに蒸気圧測定装置の立ち上げにも大いにご尽力いただきました.写真は送別会のときのものです.


Dr. Piotr M. Konieczny

セルゲイ・クルチニン(Sergei P. Kruchinin)教授

(2013年7月1日〜8月16日滞在)

ウクライナ科学アカデミーのメンバーであり,ボゴリュゴフ理論物理学研究所の教授のセルゲイ・パブロビッチ・クルチニン先生がセンターに滞在されました.凝集系の固体物性を理論サイドから研究されており,有名なダビドフ先生のスクールで活動され,その後,酸化物超伝導体の強相関効果に基づく各種の異常現象の熱力学的な問題や,MgB2 超伝導体のマルチバンドモデルによる解析,さらにナノ領域での磁性と超伝導の共存,競合問題とそこでの非線形現象の理論的研究を進められ,広く国際的に活動されています.2006年に一度,大阪大学に短期訪問されました.その後,メール等でやりとりしていましたが,今回,本格的に共同研究するために客員教授として来日されました.7月1日から8月16日まで,非常にお忙しい合間を縫っての滞在でしたが,ウクライナと異なり猛暑の日本にも関わらず,アクティブに活動されました.興味の対象が広く,コーヒーとクッキーを片手にサイエンスのこと,文化のこと,コンピュータのこと,政治のこと毎日議論が続きました.また,青山学院大学の秋光純先生,金沢大学の長尾秀実先生が期間中セルゲイ先生を訪ねて来阪されました.写真は,ご帰国前の送別会で,ウクライナからのお土産のコニャックを皆で飲んだ後,撮影したセルゲイ先生と奥様のイリーナさんです.長期に滞在頂き,有機超伝導や有機スピン液体,分子トランジスタなどについて理論面からの議論を続けたかったのですが,9月末に NATO の大きな国際会議を開催される予定もあり今回は1月半の滞在になりました.


Dr. Sergei P. Kruchinin

なお,ジーリンスキー博士とクルチニン教授からは,帰国後,丁重なお手紙をいただいたので再録させていただきます.

(宮崎裕司,中澤康浩)

『ピオトール・ジーリンスキー博士からの手紙』

『セルゲイ・パブロビッチ・クルチニン先生からの手紙』

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