International Symposium Material Science Opened by Molecular Degree of Freedom (MDF2012)

新学術領域研究「分子自由度が拓く新物質科学」の一環として,「International Symposium Material Science Opened by Molecular Degree of Freedom(MDF2012)」が2012年の宮崎にて12月1日から4日間開催されました. 物性物理化学研究室からは,中澤康浩教授·山下智史助教·博士後期課程学生の福岡脩平君·博士前期課程の段田麻佑さんの4名が参加しました. 中澤教授はThermodynamic Studies of κ-(BEDT-TTF)4Hg2.89Br8 under Pressures and with Magnetic Fieldsというタイトルで口頭講演を行いました. 他の3名はそれぞれThermodynamic Properties of the Spin-Liquid State in Dimer-Mott system , Calorimetry of Organic Charge Transfer Conmplexes under External Pressures,Heat Capacities of π-d Interacting System of κ-(BETS)2FeCl4 and κ-(BETS)2FeBr4 というタイトルでポスター発表を行いました.

今回の会議のテーマは,分子性導体の物性に限られていたのですが,様々な現象について多彩な発表が行われていました. 会議におけるトピックは,Dirac cone systems, Chiral materials, π-d systems, Dielectric systems, Thin films, interfaces, and devices, Proton related functionalities, Spin liquid Charge order and Mott transitions, Superconductivity, Field- or photo-induced phenomena, Theory, modeling, and computation, Synthesis of new molecules and molecular materials, Density wavesと非常に多くの分野があり,多種多様な現象に関する発表が行われました.全体の口頭発表件数は48件で,ポスター発表の件数は78件でした.

会場となった宮崎Phoenix Seagaia Resortは,宮崎空港から若干アクセスの悪い位置にあり,1時間に1本あるバスでゆっくりと会場に向かうか,タクシーを使うかしかありませんでした.我々はタクシーで20分程かけて会場に向かいました. 会場となったサンホテルフェニックスホテルはゴルフリゾート用のホテルということもあり,宿泊した部屋からは海とホテルの間にあるゴルフ場がみえました.全日程も4日間と短かったため,レクリエーションは存在せず,リゾート地としての利点はない状態でした.これには,会議の時期が冬であり,ゴルフ以外のレジャーが存在しないという点も作用していたと思います.また,会場からその他の場所にアクセスすることは難しく,食事も会場でとるしかなかったのですが,昼食・夕食ともに不自由はありませんでした.

レセプションを含めて4日間と若干短い期間でしたが,その分会議に集中できました.口頭講演会場はとても広い会場でしたが,大きなスクリーンや十分なマイク設備等があったため講演に集中できる良い会場でした.ポスター会場も十分に広い会場でしたが,実際にポスター発表が始まると少し狭く感じるくらいに多くの参加者がポスターの前で議論していました.新規物質についての発表も多く行われ,合成系の研究者と実験系の研究者の交流も活発に行われました.会場がホテルであったということもあり,ポスター会場はもちろん,ホテルのロビーなどいたるところで遅くまで議論が続いていました.分子性導体という限定された研究対象において,これほど多くの研究が展開されていることは,分子性導体が電子物性などを担う物質としてその重要性を確立させたということと,様々な興味深い物性を合成的観点からある程度狙って実現させることができるという事実の一端を示していると思えました.

会議に参加して,分子性導体においては,分子それぞれのキャラクターを考えることが大変重要で,化学的な視点からの考察が大変重要かつ必要不可欠であるというように感じました.当然,熱力学的な議論も重要であり,こうした活発に研究が行われている分野においても物性研究手段としての熱容量測定の存在意義を認識して研究を行っていくべきであるということを再認識できた会議であると考えています.

(山下智史)

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