表題の学会が2006年8月17日−20日にかけて,東北大学多元物質科学研究所野田幸男教授を実行委員長として仙台片平キャンパスで行われた. この学会の第一回は1994年に釜山で開かれ,2乃至3年ごとに両国で開催されてきた. 強誘電体および関連物質の名のもとに扱われる物質と物性は極めて多様になってきているが,今回のトピックスも,強誘電性薄膜,ナノ構造強誘電体,マルチフェロイックス,リラクサー,ゲート用酸化物,強誘電体構造,超格子,高分子,液晶,ガラス,非晶質,強誘電性相転移に関係する基礎的現象,理論,シミュレーション,第一原理計算,誘電,圧電,焦電性,光学,非線形光学,ドメイン物性,表面,界面,欠陥,材料評価,デバイスへの応用と多岐にわたっている. 参加者は150名であった. 全体講演は4件で,SrTiO3の光散乱(北海道大八木駿郎教授),ダイポールグラス(KAIST, J. J. Kim教授),エピタクシアル酸化物(Seoul National Univ.,T. W. Noh教授),マルチフェロイック薄膜BiFeO3(大阪大学奥山雅則教授)であった. これらからペロヴスカイト系,薄膜,磁性と誘電性は最近の重要なテーマであることがわかる. ダイポールグラスは誘電性とランダム系の緩和現象や統計力学の原理に関わる問題である. 招待講演,一般講演,ポスター発表でも,ペロヴスカイト系の研究が活発に報告された. チタン酸バリウム,チタン酸ストロンチウム,ジルコン酸鉛などの以前から知られたペロヴスカイト型結晶がさらに詳しく研究され,鉄族遷移元素や希土類を含む新しいペロヴスカイトの研究も盛んである. 軌道秩序化と電気分極,磁気分極と電気分極と協同効果などの面白い現象が報告され,レーザー照射による薄膜蒸着で新しい化合物が合成されている. この方面における韓国の進歩は目覚しく,メモリーデバイス(FeRAM)への応用を目指してかなり具体的な報告もあった.
一方,構造解析では日本の研究が活発で,中性子回折,シンクロトロンによるX線回折と最大エントロピー法(MEM)の組み合わせによっていろんな構造が解かれている. 阪大の熱測定グループで山室憲子さんが研究された(CH3NH3)PbBr3の秩序構造がX線とMEMで山口大学増山博行教授によって報告された. 筆者らはプロトンのトンネル状態を示す系として,水素結合とアンモニウム塩の重水素効果を取り上げ,野田教授と協力して中性子回折とMEMによって核の波動性(陽子雲)を直接的に示す研究を報告した. これらは熱測定によって,重水素誘起相転移を生じる物質であることが示されたものである.
上述のJ. J. Kim教授とは1996年にゴードン会議で会った以来の再会であった. また,大阪でICCT-96を開いたとき講演をお願いしたY. H. Jeongさん(Pohan Univ. of Science and Technology)とも再会を喜び合った. Jeongさんは磁性強誘電体について興味深い結果を達者な英語で報告した. 次回は韓国の番で,Cheju島で行われることに決まったと思う.
新築された多元物質科学研究所の前で