2009年6月28日から7月2日の日程で,米国ニューメキシコ州サンタフェにおいて開催された第64回 Calorimetry Conference (CALCON2009) に参加する機会を得た. 15ヶ国から合計95名が(内67名が米国から)参加した. 今回は,直前になって大流行を始めた新型インフルエンザのお陰で,日本からの参加者は筆者を含め2名であった. 筆者が出席せざるを得なかった理由の一つは,本会議の Counselor として,ロスアラモス研究所の Jason Lashley 博士とともにシンポジウム「Condensed Matter Physics and Detectors」の世話役をしたためであった. もう一つは,来年つくばで開催される ICCT-2010 の準備状況を Director Meeting で報告し,参加者に宣伝するためであった. 最低限の役目は果たせたと思う. もちろん講演発表とセッションの司会は行った.
今回の受賞者は,M. Thomas Record 教授(Hugh M. Huffman Award), Manuel A. V. Riberiro da Silva 教授(James J. Christensen Award), David Bessieres 教授(Stig Sunner Award)であった. それ以外は特筆すべき事項がないので,以下では Director Meeting で議論された事柄などを記したい.
まず冒頭に Allan L. Smith 博士の死去が報告された. 享年70歳であった. 彼は CALCON の Chair を務めたことがあり,Harvard 大学の教授を引退後,Mascutt 社という会社を設立し,その会長を務めていた. CALCON の将来を心配していた人物でもある.
CALCON は北米(カナダとアメリカ)で始まった会議であるが,ブラジルなど南米を加えることを検討している. 実際,CALCON2012 は ICCT とのジョイントとしてブラジルで開催されることになっている. また,近い将来,ヨーロッパでの開催も真面目に検討されている.
「Calorimetry では人が集まらない」との危惧から対策がいろいろ検討されている. 数十年という歴史を有する本会議は,表立って名称変更はできないが,副題を付することを考えている. 例えば「物理学・化学・生物学に関わる熱測定および熱分析」などである. 「Calorimetry」では古風な感じがして,外から入り込む余地がない感じがするとの懸念からである.
世代交代という問題はどの学会でも抱える悩ましい問題である. CALCON の輝かしい歴史をもってしても,若手は言うに及ばず50歳代の教授でも全く知らないことさえある. そのためか,今回はウェブサイトに昔の写真が掲載されている. 1963年の 第18回CALCON というから,さすがに蒼々たる顔ぶれを見ることができる.