ISCOM2009 会議報告

9月12日から17日に北海道ニセコにおいて 第8回 International Symposium on Crystalline Organic Metals, Superconductors and Ferromagnets (ISCOM2009) が行われました. この会議は2年に一度開催される分子性導体を中心とした国際学会ですが,もともとの GordonConference の設立指針にのっとり,合宿形式で時間を忘れて徹底的に議論できるように都会から離れたところで開催されます. 分子性導体や磁性体を研究する合成,物性研究者,理論家が集まり,朝8:30からかポスター発表終了の22:30まで休憩を挟みながら6日間にわたり様々な議論が行われました. パラレルセッションはなく,全員が同じ会場で1つの講演を聞き,議論をするというスタンスでもありましたが,実りある講演が多く充実した時間を過ごすことができました.

物性物理化学研究室から,山本貴助教と,D3の山下智史君,M1の福岡脩平君と中澤が参加しました. 山本氏は,電荷秩序をおこす様々な電荷移動錯体における分光学的な手法による研究を,山下君はスピン液体を形成する三角格子化合物の低温熱容量について口頭発表講演を行いました. 両名とも,ホットな話題を提供し,注目を集めました. また,福岡君はキラルな磁性体での特異な磁気熱容量とその磁場による変化に関する研究を,中澤は有機超伝導体に対する圧力下熱測定の開発に関するポスター発表を行いました. 電荷秩序,スピン液体といった分子性強相関化合物ならではの面白い性質は,理論的にも未解明な点が多く,盛んな議論がなされました.

この時期のニセコは気候がよく,暑い関西から移動すると別天地のようなすがすがしさでした. 新千歳空港からバスで3時間,鉄道を用いても最寄駅まで来てもホテルの定時送迎バスが日に2–3本という状況の中,雄大な羊蹄山とその周辺の原生林の中で,自然を満喫しながら分子性導体を材料に様々な議論ができました. 前回のポルトガルから日本を経て,2年後の2011年はポーランドのクラコフ近辺の高原で行われる予定です.

(中澤 康浩)

Picture 1 Dr. T. Yamamoto

Picture 2 Mr. S. Yamashita

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