高等学校での出張講義

2009年11月20日(金)に広島学院に出向き,高校3年生の理系志望の生徒108名(プラス教員数名)を対象に「エントロピーと秩序 —熱力学第二法則—」という演題で,午後の2限分を使って講演を行った. 同じ種類の講義は,学部1年生を対象に「基礎セミナー」や「化学入門セミナー」で行ってきたが,さすがに高校生相手ということで全く別の準備を約1ヶ月かけて行った. 種本は主として「The Second Law (P. W. Atkins 著,1984年)」と「Introduction to Molecular Thermodynamics (R. M. Hanson, S. Green 著,2008年)」とした. すなわち,エントロピーを分子論的に理解させる試みを行った. 熱力学の本来の姿ではないが,物理や化学で原子や分子の概念をもち,数学で確率や統計,順列や組合せを習得した生徒を相手にしたとき,エントロピーを身近に感じさせる一法と考えたのである. 予めプリントを配布していたこともあり,的を射た熱心な質問が講演終了後に幾つも出たのには大いに満足した. 話し手にとっても勉強になる大変よい機会であった.

実は,同校の2年生を相手とした進路講演会が7月4日(土)にあり,そこでも「職業の紹介(大学教授の場合)」と題する話をしていた. 卒業生以外の講師は筆者だけであったが,アンケートによれば生徒は非常に興味をもって聞いたようである. いずれにせよ,好奇心が旺盛なあいだに,もっといろいろな刺激があってよいと感じたのであった.

(稲葉 章)

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