Fig. 1. Experimental neutron (dots) and X-ray (crosses) diffraction patterns and the calculated patterns (solid lines) arising from a centered unit cell for 0.7 monolayer coverage on graphite of perfluorohexadecane.
Fig. 2. Illustration of the unit cell for perfluorotetradecane on graphite.
Fig. 3. Illustration of the unit cell for perfluoropentadecane on graphite.
Fig. 4. Experimental neutron (dots) and X-ray (crosses) diffraction patterns and the calculated patterns (solid lines) from pgg unit cell for 0.7 monolayer coverage on graphite of perfluoroheptane.
Fig. 5. Experimental neutron (dots) and X-ray (crosses) diffraction patterns and the calculated patterns (solid lines) from primitive unit cell for 0.7 monolayer coverage on graphite of perfluoroheptane.
Fig. 6. Illustration of the pgg unit cell for perfluorononane on graphite.
Fig. 7. Illustration of the primitive unit cell for perfluorononane on graphite.
一連のパーフルオロアルカン分子(炭素数n=6〜10およびn=12〜16)がグラファイト表面に吸着し形成した単分子膜固体の二次元構造と相挙動については,本レポートでも逐次報告をしてきました(No. 28,研究紹介21;No.29,研究紹介22).ここで構造研究の総まとめをしておきます(J.E. Parker et al., J. Phys. Chem. C, published on (Web) Nov. 24 (2009)).本研究はケンブリッジ大学と共同で行ってきたものです.X線回折測定は当センターの設備で,中性子回折測定はグルノーブルにあるラウエ・ランジュバン研究所(ILL)に設置されたD20(入射中性子の波長λ=0.242 nm)で実施し,構造解析には両者のデータを相補的に活用しました.
興味の中心はアルカン単分子膜固体との比較にありました.パーフルオロアルカンはアルカンと違ってコンホメーションの自由度がなく,ヘリカル構造をもつ剛直な分子であり,長軸周りの回転が起こる回転相が高温相として出現するものと期待されます.実際,n=7, 8, 10, 15の単分子膜固体では相転移を見いだしています.紙面の都合で,全ての回折データや解析の詳細を示すことはできませんが,以下に特徴的な構造について述べます.
全般的に,最も低角側に現れる回折ピークは分子長を反映しており,これから二次元単位格子の長軸が推定できました.また,分子は基本的にグラファイト表面と平行に沿っていること,グラファイトの繰り返し周期とは整合していないことが共通しています.
低温相の構造には大きく2種類あります.n=12, 13, 14, 16 では分子軸が互いに平行に並び,二次元格子の対称性は C と考えられます.n=16の回折パターンとフィッティングの結果をFig. 1 に示します.また,n=14の単位格子をFig. 2に示します.一方,n=6, 7, 8, 9, 10, 15では,分子軸が互いに平行でなく隣接分子との間で角度をもつことが分かりました.その二次元格子の対称性は基本的に p と考えられます.n=15の単位格子をFig. 3に示します.しかし,n=7, 9についてはpggの可能性も捨て切れませんでした.n=7の実測の回折パターンに対するフィッティングの結果を,単位格子をpggとした場合とpとした場合について,それぞれFig. 4およびFig. 5 に示します.Fig. 6およびFig. 7は,n=9についてpggおよびpの単位格子をそれぞれ示したものです.
興味深いのは,相転移を示すn=7, 8, 10, 15の高温相の構造がn=12, 13, 14, 16の低温相と同じで,分子軸を平行に並べた対称性Cをとることで,これは高温相が回転相である現れと考えられます.回折パターンは分子の長軸周りの回転角には鈍感で,回折実験ではこれ以上の情報を得ることはできませんが,高温相のもっともらしい安定構造として理解できます.
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