2010年合成金属の科学と技術に関する国際会議(International Conference on Science and Technology of Synthetic Metals 2010)に参加して
2010年合成金属の科学と技術に関する国際会議(International Conference on Science and Technology of Synthetic Metals 2010(ICSM 2010))が7月4~9日に京都国際会議場において開催されました.この国際会議は有機物を中心とした伝導性・磁性・光学特性など機能性に携わる研究者の活発な議論の場でして,恐らく,この分野の中でも最大規模です.参加者の専門は化学や物理,基礎と応用,合成・測定・理論等,多岐にわたっています(Conference Themes 参照).白川英樹先生やAlan J. Heeger博士といったノーベル賞学者を始め,当該分野の高名な研究者が長年中心的な役割を果たしています.この国際会議の歴史は34年にも及び,1976年から隔年(初期は毎年)開催で,今回が記念すべき20回の開催でした(開催地参照).京都での開催は1986年来2回目です.
私と中澤先生は,幾つかあるパラレルセッションの中でも,結晶性物質を中心とするセッションに参加してきました.このセッションでは,分子性結晶の熱測定といった本センターの興味となる研究の発表も大変活発に行われています.阪大OBの山下智史博士(現・理研)も,本会議において熱測定の研究成果を発表しました.また,センターOBの竹谷純一先生や博士課程の山岸正和君・岡田悠吾君も,有機デバイスのセッションで発表しました.
さて,私の発表内容ですが,回折限界ギリギリの(きわめて細い)シンクロトロン赤外光を分子性の伝導物質に照射することで得られる新たな知見に関して述べました.細い赤外光の使い道は幾つかありまして,例えば,板状結晶の狭い側面から赤外スペクトルを測るという利用法があります.この方法をスピン液体という有機固体の中で話題にある物質の全て(といっても2種類しかないのですが)に適用した結果を,全時間の半分を使い発表しました.
細い赤外光の別の使い道として,結晶表面を掃引しながらスペクトルを測定する(マッピング)という用途があります.この方法を相転移を示す物質に適用することで,異なる2相が共存する様相を可視化することができます.これをβ''-型ET塩と呼ばれるグループに属する超伝導物質に適用しました.その結果,結晶表面が2種類の領域に分けられ,それぞれの電子遷移や分子内振動の挙動が異なることが判明しました.この内容を時間の残り半分で発表しました.後半の研究には、センターOBの圷(佐藤)あかね博士も共同研究者として参画しています.
次回開催予定地はアメリカのアトランタです.ホームページはhttp://www.icsm2010.com/index.htmlです.
(山本 貴)
Conference Themes
- Inherently Conductive Polymers
- Molecular and Polymeric Materials for Electronics, Optoelectronics, Photonics and Magnetics
- Advanced Conjugated Materials and Technologies for Applications
- Organic Conductors and Superconductors
- Fullerenes, Carbon Nanotubes, Graphene and Related Nanostructures
- Molecular Magnets and Organic Spintronics
- Molecular/Polymer Transistors and Single Molecule Electronics
- Organic ELs, Polymer LEDs and Displays
- Energy Storage and Organic Photovoltaic Devices
- Next-Generation Organic Materials and Device Applications
- Supramolecules and Topological Materials
- Self-Assemblies, Ordered and Super-Hierarchical Structures
- Electrochemical Applications, Actuators and Sensors
- Bio-Related Nanomaterials,Technologies and Applications
開催地
Siofok (1976), New York (1977), Dubrovnik (1978), Helsingor (1980), Boulder (1981), Les Arcs (1982), Abano Terme (1984), Kyoto (1986), Santa Fe (1988), Tubingen (1990), Goteborg (1992), Seoul (1994), Snowbird (1996), Montpellier (1998), Bad Gastein (2000), Shanghai (2002), Wollogong (2004), Dublin (2006), and Porto de Galinhas (2008).
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