構造熱科学研究センターの現況報告

構造熱科学研究センター長   稲葉 章

東日本大震災が2011年3月11日,東北地方を中心に襲った.まだ記憶に新しい1995年の阪神・淡路大震災と比較して,地震の規模は大きかったものの直下型ではなく,被害の大半は直後の津波によるものであった.何とも痛ましい限りである.せめて復旧や復興が急ピッチで進行中ならまだしも,その後の作業は遅々としている.とりわけ,福島の原発事故はもっと長期間に及ぶ別の大問題を引き起こしてしまった.直後にマスコミに登場し「核燃料のメルトダウンは起こるはずがない」と言っていた科学者は今どう考えているのだろうか.いろいろな「想定外」が何か言い訳がましく,いまや流行語のように使われている.科学者,現場を含め具体的に取り組んでいる技術者,それに関わる行政担当者,それぞれのあり方が問われたのではないだろうか.何としてもこの大災害を早く克服したいものである.今回の事故が将来のエネルギーを考えるうえで契機になったとすれば,それを最大限生かすのが,いま生きているわれわれの使命という気がしている.

 さて,大阪大学では学長選挙が行われ,8月から新執行部がスタートした.新総長は医学系出身の平野俊夫教授で,「22世紀にも輝き続ける大学に」というメッセージを送っている.ともすれば基礎研究が軽視されがちな今の時勢に,「大学は100年単位で行き続ける必要があり,将来に花開く学問の種をまき,夢を持ち続けるべき」とのことで,われわれも大いに共感するところである.一方で,「優れた基礎研究はすぐに実用化されるもの」という冷ややかな見方もある.今回,理学系出身の3氏が副学長として加わったこともあり,基礎研究と教育をより重視した大学へと牽引していってほしいものである.当センターが所属する理学研究科でも執行部が新しくなり,化学専攻教授で当センター運営委員でもある篠原厚教授が研究科長に就任した.

構造熱科学研究センターは3年目に入った.われわれは震災の影響を直接受けたわけではないが,化学会や物理学会など幾つかの関連学会で春の年会が中止になったり,予定されていた国際研究集会が中止や延期になったり,当初は研究活動と無関係というわけにはいかなかった.以下にセンターの現況を報告する.バックナンバーはホームページにも掲載しているのでご覧いただきたい.

1.人事

【運営委員会委員】(2011年11月1日現在)

教 授 稲葉 章 構造熱科学研究センター(センター長)
教 授 大貫惇睦 物理学専攻
教 授 佐藤尚弘 高分子科学専攻
教 授 篠原 厚 化学専攻
教 授 滝澤温彦 生物科学専攻
教 授 中澤康浩 化学専攻
教 授 深瀬浩一 化学専攻
教 授 宗像利明 化学専攻

【教職員の構成】(2011年11月1日現在)

センター長(兼)
教 授
稲葉 章
准教授 宮崎裕司
講 師 長野八久
助 教 高城大輔
特任研究員 Natalia GORSKA
学振特別研究員 鈴木 晴
事務員(兼) 細川裕子
教 授(兼) 佐藤尚弘 (高分子科学専攻)
教 授(兼) 中澤康浩 (化学専攻)
助 教(兼) 山本 貴 (化学専攻)

【学生】

(2011年11月1日現在:*印は化学専攻,#印は高分子科学専攻の兼任教員の研究室に所属)

【就職·進学】

(*印は化学専攻,#印は高分子科学専攻の兼任教員の研究室に所属)

2.研究・教育活動

国際会議ならびに国内学会で行った研究発表は別途,リストにして掲載してある.国際会議については報告記事を参照していただきたい.センター専任の教員は全員,講義担当や学生実験担当という教育面でも化学専攻の基幹研究室と同等に分担している.本務での講義担当の外,他大学での講義などにも可能な限り要請に応じている.

(1) 科学研究費補助金など競争的資金の取得状況

(2) 講義などの担当

 宮崎は,大阪市立大学で1年生を対象とする講義「基礎物理化学B」を担当している(2011年10月—2012年2月).佐藤は,天王寺高校理数科集中セミナーで講義を行った(2011年7月25日).本務の教育活動として,それぞれ講義・セミナー・学生実験などを担当している.今年度の担当は以下の通りである.

<第1セメスター>

基礎セミナー(化学フロンティアV):稲葉,宮崎,高城,中澤,山本/化学概論:宮崎/化学熱力学1:長野/基礎セミナー(現代市民社会と科学):長野/国際教養科目(平和の探求):長野/基礎化学1:中澤/基礎セミナー(化学フロンティア\):佐藤/基礎教養科目(現代化学の基礎):佐藤

<第2セメスター>

化学入門セミナー2(少人数セミナー):稲葉/共通教育化学実験:宮崎/基礎セミナー(平和研究入門):長野/基礎化学2:佐藤/先端教養科目(化学の進歩):佐藤/理学への招待:佐藤

<第3セメスター>

化学熱力学1:稲葉/共通教育化学実験:長野,高城/基礎化学3:佐藤/化学発展セミナー:佐藤/自然科学実験2:山本

<第4セメスター>

化学熱力学2:稲葉/基礎化学実験:長野/化学オナーセミナー2:佐藤/高分子科学:佐藤/化学オナーセミナー3:中澤

<第5セメスター>

統計力学概論:中澤/化学実験1:宮崎,長野,高城,山本

<第6セメスター>

統計熱力学演習:宮崎

<第7セメスター>

物性化学:中澤/化学熱力学3:中澤

<大学院講義>

構造熱科学:稲葉/凝縮系物理化学:中澤/大学院物理化学:中澤/固体電子物性:中澤/化学アドバンスト実験:高城,中澤,山本/高分子物理化学:佐藤/ナノサイエンス・ナノテクノロジー高度学際教育研究訓練プログラム:佐藤

3. 学位論文

この一年間に博士(理学)が3名,修士(理学)が9名誕生した.

(*印は化学専攻,#印は高分子科学専攻の兼任教員の研究室に所属)

【博士(理学)】

【修士(理学)】

(2011年3月)

4.社会的活動

本年の各人の活動状況を以下に記す.

稲葉 章:

宮崎裕司:

長野八久:

中澤康浩:

佐藤尚弘:

5.海外出張

氏名 目的国 目的 期間
教授(兼)
佐藤尚弘
アメリカ Pacifichem 2010に出席(ホノルル) 自2010.12.15
至2010.12.20
教授(兼)
佐藤尚弘
中国 FAPS 2011に出席(北京) 自 2011.5.8
至 2011.5.10
教授(兼)
中澤康浩
カナダ 日加フラストレーション系ジョイント会議に出席
(バンクーバー)
自2011.5.27
至 2011.5.31
教授(兼)
中澤康浩
アメリカ CalCon 2011に出席(ハワイ) 自 2011.6.14
至 2011.6.17
教授
稲葉 章
ポーランド The 27th Janik’s Friends Meetingに出席(ザコパネ) 自 2011.7.9
至 2011.7.18
教授(兼)
中澤康浩
韓国 理学研究科の国際交流(ソウル,テジョン) 自 2011.9.15
至 2011.9.16
助教(兼)
山本 貴
ポーランド ISCOM 2011(グニェズノ) 自 2011.9.25
至 2011.9.30
助教(兼)
高城大輔
アメリカ メリーランド大学にて共同研究(メリーランド) 自 2011.10.1
至 2011.12.10
助教(兼)
高城大輔
アメリカ 2nd Nano Today Conferenceに出席(ハワイ) 自 2011.12.11
至 2011.12.16

6.外国人来訪者リスト
(List of visitors from foreign countries)

(2010年11月1日〜2011年10月31日)
来訪者
(Visitor)
所属
(Affiliation)
訪問期間
(Visiting days)
Dr. Natalia Gorska Jagiellonian University, POLAND January 14, 2010–
Mr. Konrad Schindler Technical University Munich, GERMANY September 26, 2010–March 21, 2011
Prof. Francoise M. Winnik University of Montreal, CANADA January 17—March 15, 2011,November 4, 2011
Dr. Javier Campo University ad Zaragoza, SPAIN April 13, 2011
Mr. Alexander N. Bourque Dalhousie University, CANADA June 8, 2011
Prof. Joel S. Miller University of Utah, USA June 28−29, 2011
Prof. Yoshikata Koga University of British Columbia, CANADA October 3, 2011–December 1, 2011

Title of lecture at seminars

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