プログラムについて

近年の科学は、非常に細かい専門分野に細分化され、各分野とも高度化・専門化し、その専門知識を修得するのは容易ではない。理工系大学院での教育の主目的は、ある専門分野における最先端の研究内容を理解し、かつ院生自身で最先端の研究を遂行することにある。そのため、ともすれば細分化された非常に狭い専門分野のみの学習・研究のみに汲々とし、専門分野以外の基本的知識の欠如さらには無関心という問題を引き起こしている。本教育プログラムは、専門分野での深い知識と研究能力の獲得を維持しつつ、他分野への視野を広げ、かつ大学院修了後に必要となる企業等での応用研究や国際性にも対応できる能力の開拓をめざす事業を進めている。

日本学術振興会「魅力ある大学院教育」イニシアティブ

教育プログラム及び審査結果の概要一覧



取組と計画の概略

異なる専門分野間の相互作用による活性化

各大学院学生は希望により、専攻内の異なる分野の2つの研究室に配属される(二重研究室配属)。修士あるいは博士論文テーマは、各学生および主・副配属研究室の指導教員の3者で協議し、2つの研究室の研究分野が融合したテーマを決定する。テーマ決定の最終調整は主指導教員が行う。各学生は、副配属研究室が行うリサーチセミナー・雑誌会にも参加し、年に数回その会で自身の研究の進捗状況等を発表し、副配属研究室の指導教員からも研究指導や修士(博士)論文の作成指導を随時受ける(高分子科学インタラクティブ科目セミナー)。この制度を有効にするために、定期的に主・副指導教員間で議論する。

基盤となる高分子科学の基礎知識取得

これまでに開講されているコア科目(「高分子有機化学」、「高分子物理化学」、「高分子凝集科学」)に、「情報高分子科学」を加えて、博士前期課程の必修科目とする(高分子コア科目)。また、博士後期課程から当専攻に入学した大学院生にも、このコア科目を履修させる。

企業の研究者および外国人研究者との相互作用による活性化

資料の作成技術、コミュニケーション能力、発表能力等のスキルを向上させる方法論の講義を専門の講師から受けた後に、非常勤講師として招聘した企業の主任研究員および外国人研究者等が指導する少人数クラスで、各大学院生が自身の研究の進捗状況をそれぞれ日本語および英語で報告し、その報告内容について議論する(高分子科学インタラクティブ演習)

博士後期課程教育の充実化

後期課程入学者は、希望する進路にあわせて「大学教員養成コース」か「企業研究員養成コース」を選択し、前者では1ヶ月程度の外国研究機関での短期留学と大学院授業の教育・研究指導実習、後者ではやはり1ヶ月程度の企業インターンを義務づける(高分子科学インタラクティブインターンシップ)。また、国際学会発表を支援し、さらに専攻主催の国際会議を学内で開催し、大学院生(含前期課程)を全員参加させる。

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体系的な教育課程の編成

1) 本教育プログラムは、前項の人材養成目的を踏まえて、専門分野での深い知識と研究能力の獲得を維持しつつ、他分野への視野を広げ、かつ大学院修了後に国際的に活躍でき、企業で必要となる応用研究に対応できる能力の開拓を目指している。具体的には以下のような編成となっている。

二重研究室配属による閉鎖的教育の解消 

博士前期課程の大学院学生は、化学系、物理系、生物系の3つの分野に分類した専攻内の研究室から、異なる分野に属す主と副の2つの配属研究室を選ぶ(副配属研究室は、入学時のオリエンテーションでの研究室紹介を参考に選択)。この方法は、本学理学部が特色GPプログラムで進めている「進化する理学教育プログラム(学部一括教育)」が根底にあるため、本学理学部出身の学生には違和感なく受け入れられるはずである。そして、各学生は両研究室の指導教員と相談しながら、自主的に自身の研究課題を決定する。また、副配属研究室主催のリサーチセミナーや雑誌会にも参加し、適宜自身の研究の進捗状況を発表・議論する。この指導方法により、異なる専門分野への興味が増し、従来陥りやすかった一研究室内での狭い専門分野に偏った閉鎖的な教育を解消できる。また、異なる分野の相互作用により、新しい研究上の進歩が期待される。後期課程の学生も異なるコースから主・副配属研究室を選び、入学後1ヶ月程度を使って、自身で研究課題を検索し、リサーチプロポーザル発表を専攻全体で行って、各教員の意見を聞いた後に最終研究課題を決める。やはり副配属研究室主催のリサーチセミナー等に参加し、自身や他の学生の研究進捗状況を議論し、研究の進め方の指針とする。

多様な相互作用による研究活動の活性化

短期間招聘した企業研究者および外国人研究者の講師との議論の機会を与え、またプレゼンテーション能力の向上をめざした少人数の演習科目を行い、企業での応用研究および国際性に対応できる能力を養う。また、学内で外国人講演者を招待者した国際シンポジウムを開催して、大学院学生全員を参加させる。

専門的な基礎知識の習得

前期課程の院生および後期課程から当専攻に入学してきた院生は、高分子コア科目を必修とし、化学・物理・生物と関連する高分子科学の専門的な基礎知識を習得する。この必修の課目は、学部時代に高分子に関する講義を受けていない大学院生にも理解できるように、専門用語の説明等を詳しく行う。

博士後期課程教育の充実化

後期課程入学者は、自身の進路希望により「大学教員養成コース」か「企業研究者養成コース」を選択し、前者コースの院生は最低1ヶ月程度の外国研究機関への留学および学部あるいは博士前期課程の教育・研究指導実習、後者コースの院生は、最低1ヶ月程度の企業でのインターンシップを義務づける。また、外国で開催の国際学会への参加・発表を支援する。さらに、当専攻で行っている国際会議(OUMS)、21世紀COEの国際会議(IEC会議)において若手研究者が集まるワークショップを後期課程院生に自主的に企画・運営させる。

2) 上記の2重研究室配属により、異なった分野からの意見を聞きながら、修士あるいは博士論文の研究を行う。その際、異なる分野に関する必要最小限の知識は、コア科目で習得できるようにしている。また、企業研究者や外国人研究者を講師として招聘し、研究の進捗状況を議論する機会を作り、研究を進める指針とすることができる。さらには、研究・論文作成指導も主・副配属研究室の2人の指導教員から受けることができ、最終的な論文審査もスムーズに行える。

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これまでの取り組みに関して

当該専攻は、日本で唯一の理学系の高分子関係専攻として、基礎から応用研究までを連続的につなぎ、かつ物理・化学・生物の階となる学際性を生かし、これまで以下のような教育上の取り組みを行ってきている。

収容人員の確保

理学系・工学系双方から大学院生(含社会人)を多数受入れ、前・後期課程ともに定員を充足させている。

コア科目の導入

高分子学研究者としての基盤となる「高分子コア科目」を必修とし、基礎的学力を確保させている。

他研究科との相互作用

21世紀COEの主たる専攻として、工学・基礎工学研究科と共同で講義・研究会・国際会議等を実施し、基礎研究・応用研究それぞれの意義を理解させ、自身の研究の位置づけを明確に把握させている。

他分野との相互作用

特色GPプログラムにて、理学部4学科混成の授業を学部低学年で実施し、異分野への親近感を持った学部生を、当専攻の大学院に多数入学させている。

外国との相互作用

21世紀COEや当専攻主催の国際会議に出席させ、国際性を養い、外国の研究動向を理解させている。

企業研究者との相互作用

産学合同研究会を毎年開催し、企業での研究情報を大学院生に提供している。

リサーチプロポーザル

創造的な研究開拓能力向上を目指し、後期課程1年次に自身の研究予定を発表させている。

後期課程の修了年限短縮制度

後期課程を1年で修了できる制度を実質化し、研究意欲を向上させている。

アニュアル・レポートの発刊

専攻の毎年の教育研究活動成果を、広く一般社会に発信している。

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