第66回カロリーメトリーコンファレンス
(CalCon 2011)会議報告

第66回カロリーメトリーコンファレンス(CalCon 2011)が2011年の6月12日から17日の日程で,ハワイのオアフ島で行われた.今年は,2007年以来の日本の熱測定学会との共同開催の年にあたり,前回と同様に島の北端にあるリゾート地(Turtle Bay Resort)で,バイオ,薬品,高分子,物性など様々な分野の研究者が集まり熱測定に関する議論を行った.それぞれの分野で CalCon 側の Chair と日本側の Co-chair が協力して充実したセッションが組まれた.中澤は Condensed matter の Co-chair を担当した.CalCon ではよくあるとはいえ,直前までスケジュールなどがオープンにならず気がもめたが,結果的には非常に内容の濃いコンファレンスであった.

 筆者が主として参加した Condensed matter のセッションではフロリダ大学の G. R. Stewart 教授,韓国の Tuson Park 教授をはじめ,f 電子や d 電子の低温での超伝導や磁性研究を行う多くの研究者が参加し,熱測定でみる低温での励起構造の研究や,高磁場までの熱測定,さらには高圧での測定で超伝導の対称性を議論するような研究が数多く報告されていた.CalCon の Condensed matter セッションは,固体物性のまとまった熱測定に関する話を聞くことができる場として,参加していると非常に勉強になる.欧米の物性研究者は熱測定のデータに関する関心が高く,またそこからサイエンスを導く深い知見をもっているように感じた.

 阪大からは,中澤と大学院生の福岡,村岡が参加し,それぞれオーラル講演を行った.中澤はカゴメ格子構造をもつ Cu を含む天然鉱物である Vorbothite のスピン液体や磁気秩序に関する研究報告を行った.福岡は,キラルな構造をもつ金属錯体の磁場方向を様々な制御した状態での熱測定について,村岡は Cu 錯体の圧力誘起強磁性転移についての熱測定結果を報告した.高圧下での熱測定であっても,小さい熱異常や励起構造が議論できて当然というスタンスで厳しい質問が多出し,2,3年前より格段に要求されるレベルが高くなっていることを感じた.今一度,装置開発をしっかり考える必要があることを意識するとともに,沢山のアドバイスを大事にしたいと感じた.中日の6月15日午後は,近くのポリネシアンセンターへのエクスカージョンツアーがありオープンな雰囲気での食事と,ポリネシアン文化を紹介するショーを楽しんだ.

 今年の CalCon では日本から2名の受賞者がでた.J. J. Christensen 賞には,かつてセンターに在籍されておられた筑波大学の斎藤一弥先生が選ばれた.断熱カロリメーターを用いた精密熱測定による数々の研究成果が受賞の対象である.その中には,センター在籍中にされたお仕事も沢山含まれている.また,40歳以下の若手に贈られる Stig Sunner 賞には熱測定学会でも活躍しておられる橘信博士が選ばれた.写真は,懇親会で,受賞者一同がそろったものである.H. M. Huffman 賞の Manuel A. V. Ribeiro da Silva 先生,J. J. Christensen 賞の斎藤一弥先生や CalCon 2011 の Chair である B. F. Woodfield 先生,Stig Sunner 賞の橘先生が写っている.来年の CalCon 2012 は,ICCT との同時開催になり,初めて南半球のブラジルで開催される.

(中澤康浩)

Picture 4 CalCon 2011バンケットでの表彰式後の受賞者の写真
左端は Christensen 賞の斎藤一弥先生,
中央が Huffman 賞の Manuel A. V. Ribeiro da Silva 先生,
右端が Sunner 賞の橘信博士

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