大阪大学

高等共創研究院・大学院理学研究科
高分子科学専攻 高分子材料設計学

研究テーマ - Research Theme

超分子ゲル・自己修復材料

光応答性ヒドロゲルの構築

α-シクロデキストリン (αCD) とアゾベンゼン (Azo) との組み合わせにより、光でゾル-ゲルの制御が可能なヒドロゲルの構築を行った。CD 修飾カードラン (CD-CUR) と Azo 修飾ポリアクリル酸 (pAC12Azo) を水中で混合し、ヒドロゲルを形成した。ポリマー側鎖として修飾した CD と Azo の多点相互作用によりヒドロゲルが形成されたと考えられる。
形成したヒドロゲルへ CD と Azo の間の包接錯体形成を阻害する分子を添加する実験を行った。競争ホスト/競争ゲスト分子を混合した場合、形成されたゲルはゾルの状態へと変化し、大幅な粘度の減少が確認された。この結果より、ポリマー側鎖の CD と Azo の相互作用によりゲル形成が生じたと判断した。
光刺激に対するゲルの応答性を調べるため、ヒドロゲルへ紫外光の照射を行った。その結果、粘度の減少が確認され、ゾル状態へ変化した。逆に可視光を照射したところ、粘度は再び回復しゲル化した。この挙動は繰返し発現し、光で制御可能な自己修復材料への展開が期待できる。

Tamesue, S.; Takashima, Y.;Yamaguchi, H.; Shinkai, S.; Harada, A., Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 7461.

酸化還元で自己修復をコントロール

酸化・還元刺激応答性の自己修復性超分子ヒドロゲルを作製するにあたり、ホスト分子として β-CD、ゲスト分子としてフェロセン (Fc) を選択した。β-CD はその空洞に Fc のサイズがフィットするために安定な錯体を形成する。Fc は還元状態では CD と包接錯体を形成するが、酸化状態の Fc+ では CD と包接錯体を形成しないことが明らかとなっている。今回の実験では β-CD を側鎖に修飾したホストポリマーと Fc を側鎖に修飾したゲストポリマーを用いて、刺激応答性自己修復材料を作製した。合成したそれぞれのポリマーを水に溶かし、それらの溶液を均一に混ぜ合わせると、混合溶液は固まり、流動性のない安定なゲルが形成された。

シクロデキストリンを高分子側鎖に結合させたホストポリマーとフェロセンを結合させたゲストポリマーの構造、それらの水溶液の混合によるゲル形成
水溶液混合による素早いゲルの形成

ゲルを切断し、切断面同士にて再び接合したところ、切断した際の傷が消失し、再接着が確認された。(下図a参照)
更に、ゲルの切断面に酸化剤を塗布し、表面のフェロセンをプラスイオン状態としたところ自己修復能の低下が確認された。続いて還元剤を塗布してフェロセン部位を中性状態に戻したところ元のように自己修復能の回復が認められた。(下図b参照)

ゲルの自己修復性と酸化還元応答性
(a) 形成したゲルの再接着試験。(b) 酸化還元の刺激を用いた自己修復性の制御実験
自己修復の機構
酸化還元による自己修復の制御

シクロデキストリンと酸化還元刺激に応答するフェロセンを導入した水溶性ポリマーを用いて、生体系に見られるような刺激に対する応答性、自己修復性を兼ね備えた材料を人工系で実現した。

Nakahata, M.; Takashima, Y.; Yamaguchi H.; Harada, A., Nat. Commun. 2011, 2, 511.

ホスト―ゲスト相互作用を用いた完全な自己修復の実現

CD をホスト分子とする、ホスト-ゲスト相互作用を用いた自己修復材料の作製方法は、光応答性ヒドロゲルの構築、酸化還元で自己修復をコントロールに示した、(1) 高分子の側鎖にホスト分子を修飾したホストポリマーと側鎖にゲスト分子を修飾したゲストポリマーを混合する方法、(2) ホスト分子修飾モノマーとゲスト分子修飾モノマーの包接錯体を架橋ユニットとして導入し重合させる方法がある。材料自身の強度が高く、材料強度の回復時間が速い高分子材料を作製するために、(2) の方法による材料作製を試みた。
β-CD 修飾モノマーとアダマンタン (Ad) 修飾モノマーの包接錯体形成後に、主鎖モノマーと共にラジカル共重合を行い、材料を形成した。形成したβCD-Adゲル(m, n) は、架橋成分の組成比が1mol%未満であっても、安定したゲルを形成した。(下図参照)

βCD-Ad ゲルの作製とその写真
(a) βCD-Ad ゲルの重合スキーム (b) 作製したヒドロゲルの写真。
ホストの組成比(m)・ゲスト組成比(n)

得られたヒドロゲル βCD-Ad ゲル(m, n) を切断し、再結合させた。再結合した数秒後には、自重を支えるほどの接着が見られた。(下図a参照)一方で、切断面へ競争分子(β-CD もしくはアダマンタンカルボン酸ナトリウム)を添加すると、24時間接着させたにも関わらず、接着しない挙動が確認された。また破断応力を測定により、応力回復率を測定した結果、24時間後には99%の回復率と切断面の消失が見られた。この様な修復挙動は、包接錯体の包接-解離により発現したと考えられる。(下図b参照)

Kakuta, T.; Takashima, Y.; Nakahata, M.; Otsubo, M.; Yamaguchi, H.; Harada, A., Adv. Mater. 2013, 25, 2849.

βCD-Ad ゲルの接着挙動と接着機構
(a) βCD-Ad ゲルの切断―再接着試験 (b) βCD-Ad ゲルの自己修復機構
素早い自己修復挙動の発現
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