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シクロデキストリン(CD)とは

シクロデキストリン(Cyclodextrin, CD)はグルコピラノース(Glucopyranose)単位からなるα-1,4結合にて繋がれた環状オリゴ糖である。CD一分子中に含まれるグルコピラノース単位の数により、α-CD (6量体), β-CD (7量体), γ-CD (8量体)と区別される(図1)。X線結晶構造解析の結果から、未修飾CDは比較的対称性の高い構造をしている。これは広い口側の二級水酸基が分子内にて水素結合を形成しており、CDの構造を安定化している。この結果、ホスト-ゲスト化学において代表的なホスト分子であるカリックスアレーン(Calix[n]arene)ではホスト分子骨格の反転などにより構造が不安定であるが、CDの場合、水素結合のネットワークが形成され、高い対象性・安定性が保持されている。

図1.シクロデキストリンの構造
図1.シクロデキストリンの構造

CDは外部が親水性であるのに対し、空孔内部は疎水的であるために、水中では疎水性化合物を包接する。特にその最大の特徴はCDの空孔サイズに応じた疎水性化合物が包接されること(基質特異性)にある。

CDはホスト-ゲスト化学における代表的なホスト分子であるが、クラウンエーテル類よりもその歴史は長く1-9、また無害であるため、その特徴的な包接錯体形成を利用して、医薬品への応用(難水溶性医薬品への応用)や食品および化粧品への応用(香気物質などの揮散し易い成分の安定化、変質抑制、呈味性の改善など)がなされている。

CDの研究に関しては、物理化学的な研究から、その応用分野まで幅広く行われている。これらに関しては、これまでに選書にて纏められている。

水中における包接錯体の形成

前述のようにシクロデキストリン(CD)はその空孔に様々なゲスト分子を取り込み、包接錯体(Inclusion complex)を形成する。ゲスト分子としては有機分子だけでなく、イオン(ハロゲン化イオン, ClO4-, SCN-, など)も取り込みゲスト分子の種類は多岐にわたっている。これら包接錯体形成は主に水中で効率よく形成される。ゲスト分子の種類によってはジメチルスルホキシド(DMSO)やジメチルホルムアミド(DMF)中にて包接錯体も形成されるが、その形成効率は極めて低い。

CDとゲスト分子との包接錯体形成においては、疎水作用、ファンデルワールス力、イオン-イオン相互作用、双極子相互作用、水素結合など様々な弱い相互作用が協同的に機能することにより、分子間会合が生じる。このため、包接錯体形成においては会合定数(Ka: Association Constant)と化学量論比(Stoichiometric ratio)が重要なパラメーターとなる。現在、微量熱分析測定装置法の進歩により、CDとゲスト分子との会合平衡に伴う熱の出入り(エンタルピー変化:⊿Ho)を直接測定する事が可能である。実験的に決定した⊿Hoから⊿Soを算出し、Gibbs の自由エネルギー変化⊿Goと会合定数Kをサンプル量200μLといった微量で決定する事が容易に出来る。

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