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シクロデキストリンを用いた自己修復材料



 材料が破壊や疲労などを受けた場合、安全面を考慮して材料部品は交換され、その後、破損した材料は廃棄されることがほとんどと考えられる。このような大量消費は時代に見合った状況ではなく、材料への様々な工夫が必要である。一方、生体系は傷を自ら治す自己修復能をもつ。この様な自己修復能を人工物へ付与することで、材料自 身の耐久性向上かつ、メンテナンスフリー材料の実現に近づくと考えられる。
シクロデキストリンによる包接錯体形成は、包接-解離が可逆的に起こることが知られている。この性質を材料内へ組み込むことにより、生体系の様な自己修復能を持った材料創製が期待される。

シクロデキストリンを用いた自己修復性コーティング材料

 

光応答性ヒドロゲルの構築

 α-シクロデキストリン (αCD) とアゾベンゼン (Azo) との組み合わせにより、光でゾル-ゲルの制御が可能なヒドロゲルの構築を行った。 CD 修飾カードラン (CD-CUR) と Azo 修飾ポリアクリル酸 (pAC12Azo) を水中で混合し、ヒドロゲルを形成した。 ポリマー側鎖として修飾した CD と Azo の多点相互作用によりヒドロゲルが形成されたと考えられる。
 形成したヒドロゲルへ CD と Azo の間の包接錯体形成を阻害する分子を添加する実験を行った。競争ホスト/競争ゲスト分子を混合した場合、形成されたゲルはゾルの状態へと変化し、大幅な粘度の減少が確認された。この結果より、ポリマー側鎖の CD と Azo の相互作用によりゲル形成が生じたと判断した。
 光刺激に対するゲルの応答性を調べるため、ヒドロゲルへ紫外光の照射を行った。その結果、粘度の減少が確認され、ゾル状態へ変化した。逆に可視光を照射したところ、粘度は再び回復しゲル化した。この挙動は繰返し発現し、光で制御可能な自己修復材料への展開が期待できる。

Tamesue, S.; Takashima, Y.;Yamaguchi, H.; Shinkai, S.; Harada, A., Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 7461.

 


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